急な呼び出し
「あ!来た!」
リュクレーヌとブラーチが近くまで来ると、劇場の外でフランが手を振る。
「こっちこっち」と手招きをし、呼び寄せた。
すると、リュクレーヌを多少強引に引っ張り、「ほら!」と大柄な男の方に見せる。
「刑事さん。連れてきましたよ!」
紹介されたのは、刑事。なるほど、現場検証に入れてもらうためか。
「どうも、名探偵のリュクレーヌ・モントディルーナです」
「名探偵?随分と胡散臭いな……」
「よく言われます」
印象を悪くしないため、にこりと笑うも、刑事はリュクレーヌを疑いの眼差しで見る。
「まぁいい。私は刑事のフルロス・ラルファだ」
「よろしくお願いしますラルファさん」
リュクレーヌに手を差し出され、ラルファはしぶしぶ握手をする
すると、ため息をつき、フランの方に何かを話しかけた。
「坊ちゃん、お父さんかお母さん連れてこいって言っただろ」
「だから!僕は子供じゃありませんって!仕事もしてます!」
ん?坊ちゃん?子供?
「もしかして……」
これらの言葉からリュクレーヌにはフランが自分を呼んだ理由に察しがついた。
「子供と思われて現場に入れてもらえなくって、俺の事呼んだの?」
「う……」
図星の様だ。笑って茶化してやろうかと思ったら、フランの横から女の子が覗く。
「そうなの、フランたら何度も十六歳だし、アマラの仕事してるって言ったんだけど……」
「クレア!言わなくていいから!」
あぁ、この子が。リュクレーヌはフランの友人に挨拶をしようとする。
「おや、君がクレアちゃんか。」
「フランから話は聞いているわ。リュクレーヌ」
「おお、よろしくな!」
話は聞いている、か。一体なんと言われているのだろうか。
内容を気にしながらも手を差し出し握手を交わした。
「……リュクレーヌって、どこかで聞いた名前だけど」
「?君とは初対面のはずだけど」
クレアは聞き覚えのある名前に、考え込む。
「あぁ!思い出したわ!パパが飼っている犬の名前よ!」
「い、犬ぅ!?」
何という事だろう。人ならまだしも犬の名前。偶然にもクレアの父が飼う犬と探偵の名前が同じであった。
フランは思わず吹き出してしまう。
クレアは笑顔を見せたあと、リュクレーヌの背後の方を気にした。
「……それで、後ろに居るのは」
リュクレーヌの背後、現場についてきたブラーチの姿が。
「ん?あぁ、ブラーチ!お前うろうろしすぎ」
「すまない。現場に来ると辺りが気になってしまってな」
ブラーチがようやく近づき、姿を見せる。
「あっ、あの時の!」
フランがリュクレーヌと出会った日、リュクレーヌを担いで消えて行った白衣の男。
それを思い出してフランは指を指す。
「あっ……」
フランだけならまだしも、クレアまで何かに驚く。
二人の様子には目もくれず、リュクレーヌはブラーチを紹介した
「こいつはブラーチ、医者だ」
リュクレーヌほど気さくでないブラーチは、よろしくと言う代わりに一つお辞儀をする。
あぁ、やっぱり知り合いだったのか。と、どこか納得するフラン。
そして、宝石に見惚れるかのようにうっとりとした視線を送るのはクレアだった。
「すごく……綺麗」
「ん?」
「え?」
ぽつりと呟いた言葉を聞き逃しはしなかった。
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