大人げない嫉妬
「女の子?」
「うん?女の子だよ」
先ほどまでフランの友人関係を微笑ましいと言っていたリュクレーヌの表情が苦いものになる。
そして、ぶつぶつと「へぇ、女の子……女の子ねぇ……」と恨めしそうに繰り返し呟いた。
「……リア充め」
「いや!?そう言う事!!?」
ボソッと吐かれた言葉をフランは聞き逃さなかった。
納得した。なんだ、ただの嫉妬か、と。
「女の子とオペラ行くとかデートじゃん!デート!ランデブー!」
「そういうのじゃないから!!本当に友達だって!むしろ兄妹みたいなかんじ!」
そもそも、フランにとってクレアという女の子は友人でありそれ以上でも以下でもない。
誤解されたまま恨み言を言われるのは癪だ。フランは慌てて誤解を解こうとする。
しかし、女気がないリュクレーヌはその言葉すら聞こうとしない。
「あぁ、明後日依頼あるかもな。何かそんな気がする」
むしろ、先ほど快諾した申請を取り消そうとまでしてきた。
「えー!そんなのあり!?」
それでは困る!とフランも必死で食い下がる。
「リュクレーヌの好きなもの作り置きしておくから頼むよ!」
一か八か、食べ物で釣ってみる。いや、リュクレーヌもそこまで単純ではないか。
諦めかけたその時だった。
「……デザートもつける?」
じっと覗く視線がフランに向く。お、これは──
「もちろん!」
満面の笑顔でフランが肯定すると、リュクレーヌも上機嫌。
「仕方ないなぁ!感想聞かせてくれよ!」
「やったー!」
食べ物で釣る作戦は見事に成功した。
約束の日が来た。
「じゃあ、行ってくるよ」
今日ばかりは寝坊することも無く、すんなり起きたフランは食事の作り置きと身支度を済ませるとドアに手をかけた。
「おう、楽しんでおいで」
リュクレーヌは手を振る。
「……」
ドアが閉まり、一人きりになった事務所は一か月前では当たり前の景色だったのに、少しだけ寂しかった。
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