月の見える探偵事務所

「さーて!一仕事終えたし、晩御飯だな!今日も美味い飯頼むぞ!」

「うん!……って、ちょっと待って?」


フランが何かに気づく。その顔をリュクレーヌは覗き込んだ。


「どうした?」

「……ここ、事務所だよね?」


確認するようにフランは辺りを見回す。


「ん?……あぁぁぁぁっ!?」


お互いに気づかなかった。


昨日、綺麗に掃除した事務所──の姿は無残にも、窓や壁は割れ、物は散らかり、屋根にはぽっかりと穴が開いている。


「なぁぁんで!?どうして!?俺の事務所おおおっ!!!」

「……まぁ、月が見られるから良いかもね」

「良くない!寒いし!」


屋根の穴から煌々と月が二人を照らす。


「もう、事務所で戦闘は禁止ーーー!」


満月に向かうように、リュクレーヌの叫びが一月の寒空に響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る