君の仕事は

「確認する……お前に任せた仕事は!」

「僕の仕事は……マスカを倒すこと……」

「違う!」


──違う?倒すことが自分の──アマラの仕事じゃないのか?

マスカを壊すことは倒すことじゃないのか?だからこそ罪悪感を抱いているのに──


「お前の……いや、俺達の仕事は……マスカを救う事だ!」

「救……う……?」


壊すのに、救う?朦朧とする意識の中はさらなる混乱を生む。


「マスカには人の魂が閉じ込められている……ファントムの手によって」


マスカに閉じ込められている契約者の魂はファントムの奴隷として、ただ人を殺す。

ひと月経てば、自我を失い、本人の意思など無関係に。


「だけど、お前がマスカを壊すことで、ファントムの奴隷になっていた魂は天に召されて救済される!」


逆に言えば、魂を救うにはマスカを壊すしかないのだ。


「だから……メリーさんの魂を救ってくれ!」


アマラのフランができる仕事はただ一つだけだ。


──救済


メリーに撃たれそうになったリュクレーヌ咄嗟に救った時と同じように。


「絶対に……助けるんだ!」


決意と共に立ち上がる。


そして、とどめを刺そうとしたマスカの背後に回り込み、銃を突きつけた。


「何っ!?」

「メリーさん……今助けるからね」


照準を合わせて引き金を引く。


青く輝くフランの瞳は殺意ではなく、慈愛に満ちたようだった。


銃弾がズガンと打ち込まれると、それは爆発してバラバラに崩れて行った。

マスカの破壊を完了。


火の玉のようなぼんやりとした物体が天空に向かって昇る。


「リュクレーヌ……何あれ?」

「魂……だな」

「魂?」

「あぁ、アイツの魂は、無事天に召されたんだよ」


「そっか……」


マスカにされた魂は天に昇り、無事成仏したのだろう。


昇天する魂を目の当たりにするのはアマラとはいえ、フランも初めてだった。

心を殺して戦っていたアマラ軍のときは、魂の事を考える余裕などなかったから。


「ありがとな」

「え?」


「メリーさんの魂を救ってくれて」


「……うん」


リュクレーヌが感謝の言葉で労うとフランは少し嬉しそうに頷いた。



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