咄嗟の判断

「……あぁ、そうだよ。俺が……マスカだ!」

「!?」


自白をしたメリーは隠し持っていた銃を手に持ち、リュクレーヌに向けた。

居直り強盗の如く開き直り、引き金を引こうとする。


「リュクレーヌ!!」


間に合わない。

こうなったらメリーを止める方法は、一つしかない。


いや、考える暇すら与えられなかっただろう。


フランは、反射的に銃を構えて迷いなく、メリーの手を狙い撃った。


「やった!」


銃弾は見事に命中。これでメリーの銃を落とすことが出来た。


だが、フランの放った弾丸はメリーを止めるだけでは終わらなかった。


「って……えぇっ!?」


命中した銃弾から魔方陣のようなものが現れる。

すると、その部分から、パキパキと乾いた音を立てて、仮面が割れる様に体が砕けた。


次の瞬間、轟音と共に、土煙が上がる。煙が晴れた後、姿を現したのは万年筆を模した兵器だった。


「!?本当に……マスカだ!」


歯車やパイプを纏った蒸気機関の兵器。

フランが何度か戦ってきたマスカと同様のものだった。人間よりも一回り──

いや、二回りはある巨体からは威力を感じる。


「……え?何でだ?銃で撃ってマスカが乖離するなんて……」


不思議な事に、フランの銃で乖離が起きた。

アマラにマスカの乖離を強制的に起こす能力があるなんて聞いた事がない。

リュクレーヌは頭を抱えた。


「まぁいいか!俺の推理当たってたし!」


「ちょっと、危ないから下がって!」


はしゃぐリュクレーヌをフランは突き飛ばす。


「おおうっ!」


本人は吹っ飛んだが、一応、安全な場所へと飛んで行った。

 

「お前は……殺さなきゃいけなかったのに……」


メリー……いや万年筆のマスカはノイズ交じりの声で呟く。


「マスカが……喋った!?」

アマラとして戦闘を重ねてきたフランにとって、マスカが喋るなど初めてだった。


「自我が、あるのか……?このマスカは」


通常のマスカは自我がない。言葉を口にすることなど今までになかった。

マスカの事件を追うリュクレーヌも、初めての事らしい。これは後々調べる必要があるとリュクレーヌは考え込んだ。


「ブラーチに報告しないとな」


話すマスカ。そして──


「あの銃も……」


フランの銃についても。


 

一方、兵器へと姿を変えたマスカは、フランに容赦なく攻撃をする。いくつもの鋭いペン先を打ち込むが、素早いフランには当たらない。


「メリーさん!どうして……こんな事を!」

「編集長に記事を没にされたんだよ!もう、仕事なんか辞めてやるって思ったね!」

「だからって……そもそもなんでマスカになんか!」


そう、だいたいどうやって一夜の間にマスカへとなったのか?昨日まで新聞社の人間だったのに。


「俺が取材していた記事、それは……マスカの都市伝説の事だったんだよ!」

「!?もしかして……その取材の相手って!」


「あぁ、仮面を売る悪魔の商人……ファントムだ!」

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