タロット占いと推理

フランがリュクレーヌを撃った事は事実だ。これには嘘をつけない。


「……確かに、僕は彼に撃たれました。しかし、この通り元気なので安心してください!」


胸に手を当てて、にこりと微笑む。


そして、探偵と助手という立場を利用して都合のいい嘘を一つ、吐いた。


「囮捜査の作戦だったんですよ。名探偵も、時には演技が必要なもんでね」

「しかし、私の占いでは……この子は、マスカです!」

「そんな!」


どんなに言ってもスピリウスの言い分は変わらない。


どうしてフランをそこまで疑うのだろう?


リュクレーヌは「ほう」と呟くと、ある提案をする。


「そうだ!せっかく来てくれたんだ。僕も、一つ、占ってもらってもいいですか?」

「何を言い出すの!?」

「よく当たるって評判だし、ほら、犯人見つけたお代のかわりに!な?」


意味が分からない。占ってもらいたいだけなのか?


混乱したのはフランだけでなく、スピリウスもであった。


「生憎、商売道具を持っていませんので……」

「カードや虫眼鏡なら、うちにもありますよ?」


断ろうとしてもそれを阻止する。


リュクレーヌは虫眼鏡とタロットカードを引き出しから取り出した。


「……仕方ありませんね、それでは手相を」


スピリウスはやれやれといった様子。

右手で虫眼鏡を取り、リュクレーヌに手を出す様、促す。


「あ、待って」


ところがリュクレーヌはそれを止めてしまう。


「タロットのほうがいいな。絵柄とかきれいだし」


タロットカードを手に持ち、スピリウスに渡した。


「いいでしょう」


カードを受け取ったスピリウスは、仕事を始めた。

 

 スピリウスは右手にタロットカードを持ち、左手を動かしてカードをシャッフルした。


「何を知りたいですか?」

「そうだな…」


リュクレーヌは悩んだ末に、質問をした。


「この中にマスカはいるか?」

「えぇ居ます」

「それは誰だ?」

「あの少年です」

「だから違うって!」


フランは度重なる疑いに流石にうんざりし、抗議する。


リュクレーヌからも何か言ってよ!と言わんばかりの表情を見せた。


「…大ハズレ」


リュクレーヌが微笑みながら呟いた。


ハズレ?占いがか?と思ったのか、占い師は「何を仰るのですか!」と怒鳴る。


「話にならないな。あれほど行列ができているならもっと当たるかと思ったのに……」


やれやれという顔をして辛辣な言葉を並べた後、スピリウスの方を睨んだ。


「やっぱり、ニセモノじゃあ当たらないよな?」

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