助手、マスカの疑いにつき

翌日。

午前十時頃を迎えた時だった。


「フラン、起きろー」

「んん……」


リュクレーヌはフランの部屋に入る。

声をかけても起きないので、ベッドに近づき、布団を引っ張った。


「ふーらーんー」

「まだ寝たいよ……」


どうやら朝は弱いらしい。フランは布団を引っ張り返した。


リュクレーヌはため息をつく。


「お客さんを待たせるわけにはいかないだろ」


お客さんと言うワードを耳にして、フランはぴくりと反応した。

そして、布団から起き上がる。お目覚めだ。


「お客さん?もしかして、依頼?」

「あぁ、君が昨日占ってもらった占い師だよ」


大きめのリボンタイを結び、身支度をしながら話の概要をフランは聞いた。


「スピリウスさんがマスカの事件とどう関係するの?」

「なんでも昨日、殺人未遂の容疑者がお客さんの中にいたらしい」

「えぇっ!!殺人!?」


平和な街だと思ったのに、随分と物騒な事件が起こったものだ。


「青い目をした少年が、コートにシルクハットの青年を銃で撃ったとか。幸い、すぐに病院に運ばれて被害者は生きているけどな」

「怖いなぁ……て……ん?もしかして!?」


青い目、少年、銃──これらのキーワードに共通するものがあった。


フランが気づいたときにはもう遅く、スピリウスはリュクレーヌを急かして呼んだ。


「はい、今行きます」

「ちょ、ちょっと待って!」


フランは必死で止める。


だが、無情にもドアは開かれてしまうのであった。


「お待たせしました。事件の犯人を連れてきました!」

「ちょっと!リュクレーヌ!」


犯人と紹介されたのは勿論フランだ。


「あぁ探偵さん!この子です!私が昨日占ったこの子!」


スピリウスはフランを見るなりヒステリックに叫ぶ。


昨日のやり取りから、自分がリュクレーヌを信じ切らなかったから、

愛想を尽かせて犯人として警察に突き出す気か?

いや、はたまた、怪しい組織に消させようとしているのか?


ネガティブな想像だけが、フランの頭を駆け巡る。


もしかして、嵌められた?


「まぁ、僕もね。一応、名探偵ですからね。いやー事件解決出来て、何よりです」


が、リュクレーヌは至って落ち着いた様子。


「早くこの子を警察に突き出しましょう!マスカに違いないんです!」

「まぁまぁ、落ち着いて。この子はうちの助手なんですよ。」


「昨日から」と付け加えて、リュクレーヌは占い師を宥める。

それでもスピリウスの言い分は変わらない。


「私は昨日、彼を占いました。その時彼の過去に貴方を銃で撃つ映像を見たんです!」


「じゃあ、どうしてその時言ってくれなかったんですか?」


「あの場で言ったら、他のお客様を不安にさせてしまいます!だから後で言おうと思っていたんです」


リュクレーヌは「なるほど」と頷いた。

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