もう一度銃口を向けて

「……そこまで俺を疑うなら、その銃で撃つと良い」


そう言ってフランの持っている銃を指さす。


「えっ!?」


当然フランは驚いた。そして、戸惑う。


「俺だって助手に疑われっぱなしは嫌だ。君だって嫌だろ?」

「そりゃあ、そうだけど……」


この、引っかかるような気持ちをもったまま、これから先も共に生活できるだろうか?


だとしたら、今ここで白黒はっきり決めてしまえばいいのではないか?

リュクレーヌの提案は実にシンプルなものだ。


「この通り俺は丸腰だ」

「だからって」

「じゃあ、信じるか?」

「……」


言葉に詰まるフランの方を真剣に見ながら、ワントーン低い声で言い放った。


「信じられないなら、銃を撃て。信じるなら、銃を置け」

「っ……」


リュクレーヌの真っ直ぐな言葉に、フランも躊躇する。


白か黒か、


しかし、フランの選択は──


「ごめん……まだ、分からないや」


フランは、銃を構える事も、置く事もなく、手に持ったままだった。


灰色の選択。

今は目の前にいる子の名探偵が白なのか黒なのか分からない。


今は、まだ。


だが、迷うフランを見たリュクレーヌは一つ、微笑んだ。


「ゆっくりで、いいから」

「え?」


フランは顔を上げる。


「今は分かんないんだろ?でも、ゆっくり分かっていけばいいから」


リュクレーヌは、にっ、と歯を見せる。


待ってあげるというみたいに。


「……ありがとう」


フランも、つられて、少しだけ笑った。


「うん。じゃあもう寝ろ。寒いからな。」

「うん、おやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」


まだ、完全に信じることが出来たわけじゃないけど、


不思議な事に、安眠できるような気がした。

 



分厚く白いノートに綴られる文字は、今日一日にあったこと。

日記だった。


フランの話を聞い時の事を書いているときだった。流れる様に動いていたペンが止まる。


「ファントム……あいつ……やっぱり……俺を……」


恐怖かはたまた怒りか、ギリッ、とペンを握る力が強くなるのが分かった。

 

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