探偵のアリバイ

「そういう……ことか……」

「うん……だから、僕はあの時の約束を果たすため撃ったんだ」

「けど、俺は人間だから血を流して倒れた……と」


リュクレーヌを見た時に、ファントムだと思い、撃った。


だが、死ななかった。それどころかリュクレーヌは人間であった。


「本当に、ファントムじゃないの?」


だが、フランは疑ったままだ。リュクレーヌは少しだけ考え込む。


「あぁ、七年前だろ?だとしたら俺は、君と出逢う事ができない」


リュクレーヌは断言した。意味がわからないフランは「どういう事?」と首を傾げる。


「獄中にいたから、外にすら出られてないんだ」

「獄中!?捕まっていたの?」

「ほら、証拠」


と言ってリュクレーヌは引き出しから書類を取り出す。


出所届。

十五歳から二十四歳まで約九年間もの間の獄中生活を示すものだった。


罪名は詐欺罪。


「……確かに。にしても、詐欺って……」


詐欺にしては刑期が長すぎるだろうと思ったが、リュクレーヌが七年前、獄中にいた証拠だ。


「この通り、俺には立派なアリバイがある。」


七年前、フランに会う事は不可能だという。

 

フランは状況が呑み込めないのか、暫く俯く。


やっと、見つけたのに。

ファントムを見つけて、あの時の約束を果たせると思ったのに。


「……」

「まだ、疑っている?」


リュクレーヌがフランの顔を覗き込む。

俯いていたフランは、何ともいえない、複雑な表情をしていた。


「……本当に、同じ顔だったんだ。」


ただ、ファントムは自分とそっくりであったという証言がリュクレーヌにとっては気になった。


「そんなに似ているのか?ファントムと……俺」

「瓜二つだよ」

「そっか……」


忘れもしないその顔の人物にあったのだ。

早とちりでも約束を果たしたのも無理はない。


かなりの荒業ではあったが。

だが、荒業には荒業を、と言わんばかりにリュクレーヌはとんでもない提案をする。

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