絶対に美味いフルコース

日が暮れかけた夕方、事務所に戻ってまずは食材をキッチンに置く。

フランはそのまま機器を取り出して、早速調理に取り掛かるようだ。


調理機器はあまり使った事がないのか、キッチンと同様に新品のようだった。


「いい包丁だね。使ってないのが勿体ないなぁ」

「使おうとはしたんだけどな。やっぱり面倒で……」


リュクレーヌは恥ずかしそうに頭を掻く。


「まぁ、僕に任せてよ!お詫びとお礼もかねて、とびきり美味しいもの作るからさ」


撃ってしまったお詫びと雇ってくれたお礼。

どちらも兼ねてのご馳走だ。


「分かった。じゃあ、俺は待っておくよ」


フランの調理中、リュクレーヌはデスクにて何かを書いていた。

先ほどまでの手続きとは違う。厚いノートに直接何かを書き込む。


しばらくして、食欲をそそる香りがふわりと流れた。

もうできたのか?という様子でリュクレーヌは辺りを見回した。


すると、フランは「できたよー」とドアを開けた。

空腹だったのか、すぐにドアの先へとリュクレーヌは足を運ぶ。


「お待ちどうさま!」

「え……?」


テーブルに大量の料理が敷き詰められていた。


「おいしそうでしょ?」

「いや…あの」


肉料理、魚料理、野菜、スープ、デザートがあるのは分かる。


ただ、あの大量の食材がこのように変貌を遂げた事に、リュクレーヌは驚きを隠せない。


「これが桃の生ハム巻き、こっちがサーモンとオリーブのマリネでこれはグリンピースのポタージュ、それとローストビーフにトマトのチーズケーキ!」

「待って……何、呪文?」


作った本人の説明を受けても理解できない。


「フレンチのフルコース。ちょっと張り切っちゃった」


えへへと照れながらフランは頬を掻く。

ちょっと待て、こんなの、こんなの──


「絶対に美味いやつじゃん!!!!!」


間違いない。

これは美味い。三星レストランのシェフも顔負けの料理だ。

リュクレーヌは確信した。推理をするまでもない。


「とにかく、食べよう。僕もお腹減っちゃった」


二人は席に着き、少し遅めの夕食をとる。

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