行列のできる占い師

狭い通りを抜けて、開けた道に出ると、何やら行列が出来ている。


フランは不思議そうに人だかりを指さした。


「リュクレーヌ、あの行列、何?」


行列の先には小さなテーブルに座る怪しげな衣装の女性がいた。


「あぁ、アレは占いだな」


正体はこの街で当たると評判の占い師だった。


「へぇ、あれだけ人が多いってことは当たるの?」

「多分な」

「ふーん」


占い自体には興味は無いが、大盛況を上げている様子が気になった。


「何?気になるのか?」

「え?……少しだけ」

「じゃあ、占ってもらうか!」

「うん……って、えぇっ!?」


フランがリュクレーヌの言葉を理解した時には、既に手を引かれて行列の下へ駆け出していた。


「ま、たまには並ぶのも悪くないだろ」


暫く二人で並んだ。


回転率が良いのか、行列はスムーズに進む。


あっという間にフランの番がきた。

木製の椅子に腰を掛けて、おずおずとした様子で占い師の方を見る。


「よろしくお願いします……」

「はじめまして、私は占い師のスピリウスと申します」


スピリウスと名乗った占い師は礼儀正しくお辞儀をする。


「何か知りたいことはありますか」


スピリウスはそう訊きながらテーブルの右端に置かれた虫眼鏡を手に取ろうとした。


一方フランは、と言うと


「えぇと……思いつかないです」


何も思いつかない様子だ。


スピリウスは虫眼鏡を置き、代わりに透明の宝石を取り出す。

手のひらには収まらない大きなものだった。


「では、こちらの宝石で貴方様の運命を占って差し上げます」

「はぁ……」


よく分からないまま、占いが始まる。

宝石の中で乱反射するフランの顔を眺める。


本当にこれだけで自分の運命が分かるのか?と、フランは疑いの眼差し。


その視線を感じたのか、スピリウスはフランの方へ目を向けた。


「貴方は……若いのに随分と苦労したのですねぇ」

同情するように呟く。


カマをかけられているのだろうか?

フランは「というと?」と聞き返した。


「幼い時に家族を全員亡くしていますね」


スピリウスの占い曰くフランは家族を亡くしている。

それも全員。


「……はい」


占いは事実だった。


「お母様は病死……お父様は自殺……そしてご兄弟が二人とも殺されて……」


ただの死ではない。半分以上が事件性のあるもの。


「っ……」


思い出したくない過去なのだろう。

フランは泣きそうだ。

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