抱える秘密

過去を淡々と言い当てていくスピリウスの占いを止めたのは──


「これ以上は、やめてやってくれないか?この子にとって触れられたくない事かもしれないだろ?」


リュクレーヌだった。


少し厳しめの口調で言うと、スピリウスも「あぁ!失礼いたしました」と慌てる。


「それでは、未来を占って差し上げましょう」

「あ、はい」


スピリウスはもう一度宝石を眺める。眺めながら、ぽつりぽつりと結果を呟いた。


「……貴方は重大な秘密を持っています」

「秘密?そんな事……」

「それによって、誤解を生んだり、或いは自らが誤解をしたりする事になります」


「……」


フランは沈黙した。


「しかし、正直に自分の事を話し、相手の話を聴くことでその衝突は避けられます」

「はぁ……」


「気をつけて頂きたいのは、秘密を打ち明けるのは大切な人だけにしておいた方が吉でしょう。大々的に暴露する必要はありません」


丁寧なアドバイスまで貰うが、しっくりこない。


「以上です。お代は……」


占いは終わった。

賃金を請求されると、リュクレーヌが財布を取り出して口を開いた。


「俺が払うよ。ありがとうございました」


スピリウスに金貨を数枚渡す。


「貴方は、占って行きませんか?」


リュクレーヌにも占いを促すが、本人は首を振った。


「あぁ、いいや。どうせろくな結果でないだろ?」


じっと、黄色い瞳がスピリウスに向く。


その瞳を宝石に見立てたのか、スピリウスはみるみる青ざめる。


「……そう、ですね」


何か不吉なものを見る様にリュクレーヌに対して一歩引くような態度を見せた。

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