事務所に帰ると犯人とおっさんが居ました

「全く……ブラーチのやつ」などとぶつくさ呟きながら帰路につく。

病院から探偵事務所まではそう、遠い距離ではない。


リュクレーヌが事務所に戻ると玄関先に二人分の人影があった。


「あぁっ!?」

軍服らしき衣服を纏った初老の男性と、もう一人は──リュクレーヌを撃った少年だった。


どうしよう。自分を殺そうとした少年が今度はおっさんを連れて殴り込みか?リュクレーヌは少し怯えた。

しかし、家には帰りたい。

まぁ、至近距離で弾丸を食らっても生きていたんだ、大丈夫だろう。と、リュクレーヌは玄関に近づく。


すると軍服の男性の方が、慌てた様子で口を開いた。

「あぁ!どうも!お待ちしていました」

「えっと……どうも。うちに何か御用ですか?あっ、依頼ですか?」

誤魔化そうとジョークのように言ってみる。


「依頼ではないんです」

しかし、あっさりと否定されてしまった。


リュクレーヌの顔が期待の表情から、「なんだ」と少し残念そうな表情に変わる。


「申し遅れました、私はオクト・キャンベルと申します。」

「あぁ、僕はリュクレーヌ・モントディルーナです。」


自己紹介も些か、結局いったい何の用か?リュクレーヌが問う前にオクトは頭を下げた。


「先ほどはうちの部下が誤って貴方様を襲ってしまったようで……そのお詫びに参りました」

「はぁ……」


殺人未遂のお詫びなんて珍しい。そもそも、誤って殺すなんてどういう事だと思いつつ、リュクレーヌは不信そうな顔を向ける。


「ほら、フラン、謝りなさい」

「さっきは、本当にごめんなさい……」


フランと呼ばれた少年も深く震える声で頭を下げる。

しゅんとした様子はまるで、子犬のよう。

リュクレーヌの眉間を撃ったときの殺気が嘘だったみたいに。


あまりにも、申し訳なさそうだ。むしろこちらが悪いことをしているような気になって、リュクレーヌは心を痛めた。


「あぁ、そう言う事でしたか。えーと……気にしないでください」

「でもっ……!」


リュクレーヌはドアに手をかけて事務所に入ろうとする。が、二人は気が済まないのか、引き下がろうとしなかった。


ならば仕方があるまい。


「まぁ、寒いですし、立ち話もなんですから、中へどうぞ」


二人を事務所に迎えることにした。

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