血だらけの現場と攫われた死体

「……って、えっ!?嘘!?人間だったの!?」

少年は慌てふためく。

引き金を引いたときのような冷酷な笑顔が嘘のよう。


まずい。人を殺してしまった。

いや、死んだとは決まっていない。早く、助けなきゃ。


と、焦るも、どろどろと流れ続ける紅の血に「ひいっ」と怯えた。

どうやら血が苦手なようだ。


だが、このまま逃げるわけにもいかない。


「あのー……」

少年は出来るだけ血を見ないように、おずおずとリュクレーヌに声をかけた。


──もしも、死んでいたらどうしよう?


だとすれば、少年は殺人の現行犯。

どうやっても言い逃れは出来ない。


そんな中、もたもたとする少年に近づく一つの影。

「おい」

その影から、怪しむような声が掛けられた。


「はっ、はいっ!!ごめんなさい!」

咄嗟に謝りながら、少年が振り返る。すると、薄汚れた白衣を身に纏った人物が居た。


銀色の長髪、眼鏡の奥には紅色の瞳。

女性とも男性ともとれるような中性的な顔つきの人物は淡々とした様子で近づく。


そのまま、血を流し、倒れたリュクレーヌを俵担ぎにしてしまう。

「こいつは預かる」

「あ、はい」

白衣の一部は血で紅く染まる。

が、血の汚れなど躊躇せず、銀髪の人物はリュクレーヌを担いだままその場を立ち去った。


少年は、状況が分からないまま、呆然とするしかなかった。

「……って、え?」


よくよく考えたら、証拠隠滅。死体遺棄。

つまりは余罪が増える。


それはまずい!と、少年はワンテンポ遅れて立ち上がった。


「待って!」

後を追う。だが、曲がり角を曲がった先に、彼らの姿は既に無かった。

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