名探偵、暗殺(?)

レンガ通りを暫く歩くと、街へとたどり着く。


リュクレーヌは馴染みの店に足を踏み入れ、早速目当てのものを購入する事にした。


「クッキー缶、一つ」

「八ペンスだよ」

「ありがとう」


支払いを済ませると、即座に店を出た。

外は寒いからもう少し暖を取りたい気持ちもあったが、やらなければならないことがある。


クッキー缶を抱えて、ご機嫌な様子でロンドンの街を歩く。

無邪気なリュクレーヌの様子は、四半世紀を生きているにしてはずいぶんと子供っぽいものだった。

買うものがまだ酒や煙草ならば年相応な成人男性らしかったのだろうが。


しかし、彼もただ道草を食っているわけではない。

やらなければならない事──この散歩も立派な仕事の一環だ。


広がるのは焼き立てパンの香り。

目に映るのは当たると話題の占い師。

聴こえるのは道路を走る馬車の音。


パトロールの結果、今日もこの街は平和である。

なるほど、依頼がないわけだ。リュクレーヌが納得した時だった。


「うわっ!」

「おっ……と」


よそ見をしていると、曲がり角で衝突。

相手はまだあどけなさを残した、金髪の少年だった。


「大丈夫?怪我は……?」


向こうから衝突してきたとしても、よそ見をしていたのはリュクレーヌだ。

相手を気遣い、「立てるか?」と右手を差し伸べる。


「……大丈夫です。ありがとう」


少年は、にこりと笑いリュクレーヌの手を取った。

そのまま手を引き、「そして」と言いながら、腰に備えていた銃を手に取り──


「さようなら」

「!?」


眉間にゼロ距離で当てられたスチームパンクガンのようなものの引き金が引かれた。


銃声が響く。


少年のひどく綺麗で冷たい水色の瞳がリュクレーヌの目に焼き付く。


そして、石畳の道路に倒れこんだ。真っ赤な鮮血を流しながら。

 

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