スーパームーン④

という事は、彼がこの惨劇の犯人なのか?

だとしたら──


少年は、男の元へ駆け寄り、涙ながらにマントを掴んだ。


「よくも!父さんを!兄さんを……!」


──全部この人のせいで。憎い。家族を奪った目の前の男が。


しかし、男は至って冷静だった。


「気持ちはわかるが、聞いてくれ。俺は仮面を売った奴と同じ顔をしているが、中身が違うんだ」

「どういう、こと?」

「……俺の中には魂が二つある。一人は俺。もう一人は君の父さんに仮面を売った悪魔……ファントムだ」


二重人格だろうか?少年は考えようとしたが、彼の中には父の敵である悪魔が住んでいる。

その事実だけで、警戒した。


今度は自分が殺されてしまうのではないか、と。


「僕を……どうする気だ?」

少年は問う。


男は指を二本立てて「二つある」と言った。


「一つは、君を助けに来た」

「助けに?」


「あぁ。あの仮面をつけた者は一ヶ月経つと自我を失った化物になり、ファントムの意のままに人を殺す」


仮面を売った張本人だ。契約を交わした人間がどうなるかを簡潔に説明する。


つまり、父は契約を交わして一ヶ月経ったから、化け物となり兄たちを殺めてしまった。


父自身の意思ではなく、悪魔の意思で。


「君たち家族が危ない。そう思ったからここに来たが……一足遅かったようだ。ごめんな」


男は申し訳なさそうに少年の頭をくしゃりと撫でる。


少年は助かった。しかし兄たち二人は殺されてしまった。

もしこの男が来るのがもう一歩遅ければ、自分も兄たちと同じように殺されたかもしれない。


──そのほうが良かったのではないか?


複雑な心の内を吐き出せないまま少年は沈黙した。


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