スーパームーン③

家族団欒を象徴していた居間は瓦礫と化し、

赤く塗られていたのは兄たちの血肉。


「兄さん……嘘だ、嘘……う……うわぁぁぁっ!!」


既に跡形もない。

少年は兄達に寄り添う。

「どうして……どうしてこんなこと……ううっ……嫌だ……起きてよ!兄さん!」


現実はまだ飲み込めない。

生きていてくれ。


願っても、兄達だったものは目覚めること無かった。


──兄さんたちが死んだ


ようやく、何が起きたか理解して、少年の瞳からはボロボロと涙が溢れる。


「たすけて……父さん……母さん……どこ」

少年は母の姿を探す。


しかし、どこにも居ない。攫われてしまったのだろうか。


──一体誰がこんな惨い事を


答えは目の前にあった。

奇声を発しながら破壊行動を続ける機械仕掛けの化け物。


「なに……これ?」

分からない。考えても分からなかった。

何がどうなっているんだ、と少年は、はくはくと呼吸を乱しながらパニックに陥る。


──夢ならこんな悪夢覚めてくれ。いや、現実であってはいけない。どうか夢であってくれ。


祈っても意味がなかった。ギシギシと異音を立てながら機械の腕が振りかぶる。

そして、拳が少年の方へと向かう。


──あぁ、僕も。兄さんたちの所へいくんだ

死ぬんだ。覚悟はした。


が、その拳は少年に直撃する事なく、動きを止めた。


「……?」


腕が無くなっている。それに気づいた化け物は暴れた。

何処からともなくズガン、と銃弾が撃ち込まれる。


すると、化け物は動きを止め、消滅した。

家はもうボロボロだ。土埃が舞う。少年がせき込むと、何やら人影が近づく。


「誰?」


土埃に覆われて姿は分からないが。


「……遅くなってごめん。君のお父さんをあんな姿にしたのに」


「どういう……事?」

人影に訊く。


「あの化け物は何?」


案外素直に返事は返ってきた。

「あの化け物はマスカ……君のお父さんが契約した仮面によって、生み出された」


「あの化物……マスカは、僕の父さんなの?」


「あぁ、君のお母さんを永遠に生かしたい。そう願ったお父さんがお母さんの皮を被った化け物になった……」


──父さんが母さんの?


状況が掴めないが、土煙は晴れ、人影の正体が現れる。

目の前には、マントを着た、黒髪の青年がいた。


「……お前は!」


一ヶ月前、父に仮面を売り、契約を交わした人物だ。間違いない。


「あぁ、君のお父さんをこんな化物にした……この仮面を売った張本人だよ」

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