スーパームーン②

契約から程なくして、母の体調はみるみるうちに回復した。


その代わりに、父が暫く仕事で家を空ける、と告げられた。


少年は、ひどく不安だった。あの時の、黒髪の悪魔との契約と何か関係があるのではないかと。

しかし、兄弟たちはそんな事もつゆ知らず、母の回復を喜んだ。


それから一ヶ月間は、母は見違えた様に働き、子供たちとも明るく接していた。


そう、一ヶ月間、は。

 


父が居なくなって、母が回復して一ヶ月後。

満月の夜だった。


少年たち兄弟が寝静まって暫く経った後、突如、轟音が響く。


「っ!?」

「何だ!」


二人の兄たちが様子を見に行く。居間の方だ。


──待って。行っちゃ嫌だ!


少年が止める間もなく、兄たちは居間へと向かった。そして──


「う、うわぁぁぁあぁあああっ!!!」

「ぎゃああああっ!!!」

二人分の悲鳴が響く。まるで、断末魔のような。


「兄さん!?」

少年も遅れて居間へと向かう。


「っ……にい、さん?」


そこは、地獄だった。

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