真夏のカーテン

青山えむ

第1話 真夏のカーテン

 真夏に引っ越しをした。

 二階なので風がよく入る。

 前の住人が置いていったカーテンをそのまま使っている。ラッキーだ。

 真っ赤なカーテンなので「夏には暑苦しいかな?」と思ったけれども風がよく入る部屋なので気にならない。

 真っ赤なカーテンの端に、藍染めのような模様が入っている。ちょっとオシャレだ。


 日中、カーテンはよく揺れる。ゆらゆら、ゆらゆら。

 真っ赤なカーテンに小さい丸。

 夜もカーテンは揺れる。夜は模様がよく見える。何故だか毎晩ちょっと怖い。

 ゆらゆら、ゆらゆら。


「今日は夜になっても暑さが引きません。風もなく寝苦しい夜になるでしょう」

 ニュースからは連日暑さを伝える言葉が続く。


 ……あれ? 風がない?

 ニュースでは確かにそう言っていた。けれども今夜もカーテンは揺れている。

 よく考えると、夜は虫が入るといけないので窓を閉めていた。けれども毎晩カーテンは揺れていた。

 今も揺れている。なんで? 怖くなってきた。


 ゆらゆら、ゆらゆら。

 しばらくカーテンを眺めていた。

 思い切ってカーテンに手を伸ばしてみた。

 

―ばっ!! 勢いよくカーテンを開けてみた。


 知らない男がうちわでカーテンをあおいでいた。ここは二階だ。

 男は私と目が合うとうちわをあおぐ手を止めた。

 しばらく私をにらみ続けて消えていった。

 最後に一度、カーテンが揺れた。

 カーテンの端の模様をよく見ると血のあとだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

真夏のカーテン 青山えむ @seenaemu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説