第4話 叔父叔母の家。魔法でなんとでもなる

電車に乗っている間も、浴衣ジンベイのレアルが目立つので、ちひろはどうも居心地が悪い。金髪碧眼で顔立ちも整っているので、そこだけ異国の妙な空気が流れているようだった。

叔父の家につき、呼び鈴を押すと叔父が出てきた。

「ちひろ、待ってたよ。昨日は眠れたかい?そちらはどなたかな?」

「えっと・・・」ちひろがモゴモゴと言い淀んでる間に、レアルは、人差し指をクルクルと回した。

「あ、そうか、弟のレアルだね。そうだった。すまないね」

ちひろは目を丸くしてレアルを見た。レアルは、ほらね、と自慢げにニヤッと笑った。

すぐに、家に引き入れられた。

「学校への転入届も出してあるから、明日から行っても大丈夫だよ。制服はまだなんだが」

叔父さんが言った。

「そうか。レアルはどうしようね」ひそひそとちひろはレアルに耳打ちした。

「僕いいよ、行ったふりだけしておく。叔父さんと叔母さんだけに魔法を使うのがいいと思う」

「そっか。あんまり増えると大変だしね」

レアルは、もうすっかり叔父さん叔母さんに馴染んでいた。

レアルに聞くと「こう言うのは宮廷で慣れてるんだ」と言った。

ちひろはといえば、まだ叔父叔母にも慣れ切ることができず、東京という土地自体にも拒絶されているような気がしていた。なんせ最初の晴海埠頭からケチがついている。

本当は来たくなかったな、誰にも聞こえないように、ぽつりとちひろは言った。


次の日から登校することになった。

レアルもちひろも、特にレアルは叔父さん叔母さんに気に入られて、朝からご機嫌だった。

カフェオレを飲みながら、楽しげに2人と話して、すぐに制服を用意しなきゃな、なんて言われていた。

「いってきまーす」

「気をつけて」

ちひろは、ふう、と息を吐いた。レアルはまだ浴衣ジンベイだったが、学校に行くつもりはないらしいので、そのままでいいようだった。

「ずいぶん、気に入られてるじゃない?」

「子供がもう巣立っちゃってるから、暇なんじゃないの」

「その言い方って」

「思ったことを言っただけ」

レアルは、こんな人間付き合いなんて簡単だ、と言わんばかりだ。

どうも人間関係を引いて考えているようだった。

「僕はちょっと宮廷で暗殺されそうだったり、命を狙われたりしてたから」

「それどういうこと?」

「いや、そのまんま。だって、王子様だもん」

「そんなこと普段からないでしょ」

「あるよ。僕は特に妾腹だからね」


レアルと話していると、こっちの世の中全てが、なんでもないことのように思える。

こんなもんでしょ、と言わんばかりだ。

私よりずっと若いのに、どうしてそんなに達観できるのだろう。

環境だろうか。経験だろうか。はたまたそれ以外の要因だろうか。

とにかく、レアルは、見かけよりはずっと老成されていた。

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