第3話 キスで戻る?下

「誰かのキスで戻るなんてベタすぎて思いつきもしなかった。そんな魔法だったのか」

レアルは呆然としていた。

「レアルっていくつ?」

「16歳」

「私が17歳だから、一つしか変わんないのか。ちっちゃいなあ」

「病気がちだったからね。線が細いってよく言われる」

「それよりレアルがぬいぐるみじゃなくなっちゃった。明日からどうしようか」

ちひろがレアルを連れているのは明らかに目立つ。叔父さんのところへも連れてはいけない。

「ぬいぐるみには成れるけど、ぬいぐるみから元の姿に戻れないんだ僕。さっきみたいにキスしてもらわないと」

「恥ずかしすぎてもう無理。レアルが人間だとわかった時点で無理。ぬいぐるみになって」

「戻してくれないならやだ」

「やだも何も、2人でいたら目立ちすぎちゃう。。。じゃあ、ちゃんと元に戻すから、ぬいぐるみになってくれる?」

「やだ。魔法でなんとかできるもん」

「叔父さんたちにも?」

「姉弟ってことにすればいいでしょ?それぐらいの魔法なら簡単だよ」

「金髪に碧眼なのに、思い込ませられるの?」

「心配しなくていいから。僕はもうぬいぐるみには戻りたくないんだ。人形なんて二度とごめんだ」

レアルは頑として聞かない。同じようなやりとりを続けた末、ちひろが折れた。

その日は、2人でベッドに寝たものの、ちひろはこの先のことを考えてしまい一睡もできなかった。


「おはよう、ちひろ。僕は久しぶりにベッドで寝れてスッキリしたー」

レアルは、目覚めが良かったらしい。

ちひろは、全然眠れずに「うーん、おはよ」とだけ言った。


レアルは、魔法で浴衣を、ジンベイに作り替えて着替えにした。生地自体は変えられないが、色をつけることはできるというので、藍色にしてみたら普通に見られる感じにはなった。

魔法って便利ね、とちひろは感心した。

チェックアウトを早めに済ませ、叔父の家へと向かった。

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