ドラゴンの情報を求めて

「ここが王都か」


 俺は王都アルテアを訪れた。


「すげー、大勢の人だな」


 王都には多くの人々で賑わっていた。人間は元より、獣人などの亜人種も散見された。様々な人種が行き交い、バラエティに富んでいる。


「っと、まずは王立の冒険者ギルドに言ってドラゴンの情報を聞かないと」


 俺は早速王立の冒険者ギルドへ向かう。


『栄光の光』は私立ギルドでいわばそこに勤めるようなイメージだが、王立ギルドは比較的緩やかで誰でも情報を得られる集会所のような役割を果たすのだ。

 ドラゴンは国にとっても厄介な存在。

 近くにいるなら喜んで情報くらい提供してくれるだろう。


 ◇


「いらっしゃいませ!! 王立冒険者ギルドへようこそ!!」


 ギルドに入ると受付嬢の快活な声が聞こえてくる。


「ご用件は何でしょうか!?」


「ドラゴンの情報が欲しいんです!」


「ドラゴンの情報、ですか?」


 受付嬢はきょとんとした顔になる。驚いているようだ。


「え、ええ! 俺、ドラゴンを食べてみたいんです!」


「くっくっく! あっはっはっはっはっはっは!」


 その時だった。隣にいた冒険者が大笑いをし始めた。筋肉が隆々とした大男だ。恐らくは戦士系の職業(ジョブ)についているのであろう。


「ドラゴンだって!? いきなり現れて馬鹿みたいな事言いやがって! おまえみてねぇな雑魚がでしゃばってるんじゃねぇ!」


「えっと……誰だ? あんた?」


「俺はここの冒険者ギルドで長い事活動している。実力のある冒険者は大抵頭に叩き込んでるんだよ。この俺ですらドラゴンなんて怖くてとても相手にできそうもない。てめぇなんか相手になるかよ」


「試してみるか? おっさん」


「へっ。恐怖のあまり泣きわめいて小便ちびるなよ」


 大男のはポキポキと指を鳴らし始めた。


「いくぜええええええええええええええええええ! おらあああああああああああああああああああああああ!」


 単純な攻撃。右腕を振り上げ、振り下ろすだけの雑のパンチ。経験値が戻ってきて、レベルがあがった俺の素早さだったら避けるのは造作もない。


 パンチが空を切る。床が粉砕され、大穴が空いた。


「なに!? 消えただと!?」


「遅いぜ。おっさん!」


「ぐ、ぐあっ!」


 アッパーカットがアゴに命中する。


 大男は吹き飛んで昏倒した。


「すごい……こんな一撃で倒せるなんて。あなたならドラゴンを退治できるかもしれません!」


 受付嬢は驚いていた。あの大男のレベルはわからないが、50も行っていない事だろう。無理もなかった。


「ドラゴンの情報ですが、この王都アルテアを出て北のところにいった街道の先、ノーチラス地方の山岳地帯に出現情報が出ています」


「ノーチラス地方の山岳地帯だね。ありがとう! 受付嬢のお姉さん!」


 俺は一人山岳地帯を目指す。


「あっ! 待って! 一人では危険です! ドラゴンは危険なモンスターなんです! パーティーを組んで慎重に戦わないと!」


「大丈夫だよ!! お姉さん!」


 俺は一人で山岳地帯へ向かう。


 ◇


「本当に一人でいっちゃった」


 受付嬢は茫然としていた。その時だった。ギルドにある連絡が舞い込む。


「はい。王立ギルドです。えっ! 本当ですか!? フィルドさんなら今ここにいらしてましたけど」


 連絡用の魔晶石で受付嬢は会話をしていた。


「はい。ええ!? フィルドさんってあのトップギルド『栄光の光』のメンバーだったんですか!? どうりでお強いはずですっ! はい。フィルドさんならドラゴンの出現情報を聞いたらギルドを出て行かれましたけど」


 連絡が終わる。トップギルド『栄光の光』からフィルドを見つけたら連絡してくれという旨の連絡が入ってきたのだ。


「まさか、フィルドさんがあの『栄光の光』の元メンバーだったなんて。け、けど大丈夫かしら。一人でドラゴンへ向かっていくなんて」


 受付嬢はそう言って心配をしていた。















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る