【追放者サイド】剣聖ルナシスの赴任

「いやぁ、かの有名なルナシス様が我がギルドに来ていただけるとは」


 ギルドオーナーであるクロードは美しい女性を嘗め回すように見ながら接待をしていた。剣聖ルナシス・アークライト。金髪をした美しい少女ではあるが、見た目が良いというだけではない。

剣聖の名に恥じない天下一とも言える剣の腕を持ち、他のギルドでエースとして活躍をしていたのである。


「ちょっと、デレデレしすぎよ。クロード」


 女性であるドロシーは焼餅を焼く。基本的に美人は自分以外の美人に優しくない。嫉妬をするのだ。


「仕方ねぇだろ。こんな美人見せられちゃあよ。これで剣の腕まで立つんだから言うことないぜ」


 クロードはルナシスに聞こえないように小声で言う。


「しかし、これで我が『栄光の光』はさらに安泰ですね」


 カールがメガネをクイっとあげながら言う。


「そうだ! 最強の俺達に、最強の剣聖であるルナシス殿が加入してくれば、言う事なしだぜ! 最強×最強で、俺達『栄光の光』は無敵のギルドになれるぜ!」


 ボブソンは筋肉をみなぎらせる。だがなぜか、前よりも迫力を感じなかった。


「ひとつよろしいでしょうか?」


「はい。なんでしょう?」


 彼女は飲んでいたコーヒーをテーブルに置く。


「このギルドの成長の影にはポイントギフターがあったはずです。もちろん幹部待遇だろうと思っていたがいまはどこかに出ているのでしょうか?」


 ギルドの幹部達は凍り付いた。


「早く会ってみたい、そのためにここにきたのです」


「ポイントギフターって、フィルドの事かしら?」


「そう、フィルド様の事です」


「フィルド様……」


「ごめんなさい。フィルドの奴は今、私用で休んでいるところなの」


「そうなのですか……残念です」


 こうして幹部達は剣聖ルナシスの接待を終えた。


 ◇

「どうするんだ?!」


「どうするのよ!? フィルドの奴追い出しちゃったじゃない!?」


「どうするもこうするも……フィルドを戻すか?」


「いや、フィルドに払っていた金でなんとか移籍をしてもらったんだぞ!?」


「くそ……なら他のエースを放出してフィルドを……」


「いやよ! なんであの役立たずにまたお金を出さないといけないのよ!」


「喧嘩はしないでください!」


「お前達はどうなんだよ? フィルドを戻すべきか? 戻さないべきか? このままフィルドが休んでるって嘘をいつまでつき続けれるとも思わねぇ」


「だからって、なによ! なんで一度追い出した奴を戻さなきゃなのよ!」


「おい。よせよ。ここは目立つ。他のギルド員も見てるだろ」


「そうね。ちょっと場所を変えましょうか」


意見がまとまらない幹部達。


その不穏な空気をギルド員達は感じていた。そしてその不安は後々現実のものとなっていくのである。


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