2.ユズカはこんな人

 昨日は結局あれからお菓子パーティだった。正直ちょっと楽しかった。机にいっぱいお菓子を広げてただおしゃべりしてるだけだったけど、楽しいものは楽しい。

 本当にゆるふわ部に入っちゃおうかな。実際今日も来ちゃったし。いつの間にか足が動いてたんだよね。

 部長がずっと良くしてくれたもんなー。とても優しかった。

 部長の方を見ると、小さい鏡を覗きながら前髪を直していた。


「ん? どうしたの?」


 ずっと見ていたら気づかれてしまった。


「あ、えっと、なんでもないです……」

「本当に? 気になる事があったら言っていいんだよ?」

「だ、大丈夫です!」


 やっぱり部長優しい……。


「なんか固くない? もっとくつろぎなよ」

「くつろげていますよ?」

「本当に? イスとかくっつけて寝転がって良いからね?」


 寝心地悪そうだな……。


「十分リラックスしてますよ?」

「本当に? 寝転がりたくない? 床とかにゴローンって。あ、でもみんなが靴で過ごしている床に寝転がりたくはないよね。うーん……そうだ、絨毯でも引いてこの部屋は土足厳禁にしよう! カレンちゃんはどう思う?」

「えっ? 良いんじゃないですか……?」


 部室を私物化してる……。勝手に色々変えちゃって良いのかな?


「だよね! じゃあ早速注文しちゃおう」


 部長はスマホを取りだした。「受け取りは明日で……」など呟きながらスマホをいじっている。本当に注文してるの……? 行動力の塊じゃん。


「ねえねえ、これで良いよね?」


 部長は目を輝かせながらスマホの画面を私に見せる。画面には大きな絨毯と、信じられない位の桁数の数字が出ている。なにこれ……あ、もしかしなくてもこれって値段? 一、十、百、千、万……。いや、数えるのやめよう……。 部長にこれ払えるの? 高校生だよ?


「買う前に縦と横の長さとか測った方が良いかもですね……」


 そこはかとなく買わない方向に持っていかないと。


「そっか。じゃあメジャーが必要だね……アタシ持ってないや」

「私も……」

「じゃあまずはメジャーを買わなきゃ」


 部長はまたスマホを取り出した。

 諦めを知らない人だ……。また、ネットショッピングかな。高いのを買ってなければ良いんだけど。


「あ」

「どうしたんですか部長」

「いや、定規で測れば良いじゃんって」


 部長は筆箱から短い定規を取り出す。


「日が暮れますよ」

「アタシはやり遂げてみせる」


 部長は定規を握りしめた。


「本当に定規で測るんですか?」

「うん」


 冗談言っているようには見えない。


「やめたほうが良いと思うんですけど」

「カレンちゃん、アタシはやるって決めたの。止めないで」


 行動力の塊じゃん。


 今日の活動内容。机に座ってジュースを飲みながら、部長が短い定規で頑張って部室の寸法を測るのをただ眺める。


「……こんなに頑張ったのにまだ半分?」

「だからやめたほうが良いって言ったんですよ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る