第8話 襲撃
先頭の奴が両手にナイフを持って突っ込んでくるのが見えた。
二人は容赦なかった。戦闘を開始しても暫くの間は生かしておく事を考えなかった。正確には生かしておく余裕が無く、倒すのに必死だったから生け捕りに出来なかったのだ。
べソンからは盗賊は発見したら可能なら殺す事を勧められ、力があれば殺すのが常識と聞かされていたのだ。そう、害虫扱いで駆除の対象になっていると。そして盗賊は賞金首になり、倒すと賞金を得られる。死体から所謂ステータスカードなる物が出てくるのでそれを回収しなければならない。犯罪者のステータスカードは討伐証明になる為、それをギルドに持っていけば換金できるというのだ。
また、この世界には魔法があるが、誰しも生まれつきステータスカードを持っていて、名前や職業、年齢が記載されている。冒険者ギルドにて冒険者登録をすれば、冒険者ランクが表示される。
また、犯罪者のカードは色が灰色だ。
体からカードを出した後、体内に戻さなかった場合だが、生きている場合は1時間位で霧散し、体に戻る。だから失くしてしまっても1時間後には戻ってくるのだ。
但し死んだ者の場合は、体内にある最後の魔力でカードが作られ、固体になって体から排出されるというのだ。
フォルクスは冷静に剣で対処していた。最初に来た者は身を低くして突っ込んでくるので、当たる直前に風魔法の力を借りて高くジャンプし、通り過ぎざまに背中に剣を突き刺した。その後から来る奴等は大きく湾曲した剣、シミターを持った者、普通の剣を持った者、ショートソードと言われる短剣とブロードソードの中間の短い剣を2本持った者等色々な獲物を構えた者が来るが、全て剣で対処していた。魔法を使ったのは最初の奴を躱すのにジャンプをしただけだった。
フォルクスは腕試しをしていた。盗賊如きに遅れを取るつもりはなかったが、戦場以外で剣を振ったのは訓練の時だけで、兵士以外に剣を振るうのは初めてだった。
盗賊達相手に自分の剣がどこまで通じるのかを試す為に、最初のジャンプ以外は魔法を封印して戦ってみた。一対一の場合は兵士として訓練を受けたフォルクスの剣での戦いは盗賊の攻撃など取るに足らない感じだった。
ただ、フォルクスが受けていた訓練は上品な剣の使い方で、軍隊を相手にする教科書通りの訓練だけだ。
そんな事もあり、トリッキーな動きをしてくる者に対して少しずつ遅れを取り始めたのだ。余裕で躱したつもりが、腕が伸びたかのような予測より遠い間合いからの攻撃があり、当たりそうになるのだ。余裕で後ろに避けたつもりが目の前に剣が迫ってきており、慌てて大きく回避していたりした。
砂を投げかけてくる者もいたり、苦戦を強いられていた。しかしべソンの方は余裕だった。大剣を大きく一閃すれば避けられなかった者達の体は分断され、死体の山を築いていく。
途中からフォルクスは剣のみによる戦いを諦め、魔法による攻撃に切り替えていた。こちらは余裕である。近付いて来ても近接戦闘の間合いに入られる前に全て倒していくからだ。
そうして最初の者達を倒した後、べソンに警戒して貰い、フォルクスは死体から出ているステータスカードを抜き取っていた。全員の、そう15名のカードを回収し、回収し終わった直後に、先程上にいた者達が来たようだった。
「てめえら、俺らの仲間をよくもやりやがったな!」
お約束の言葉を吐き捨て、降りてきた10人ばかりが突進してきた。フォルクスはべソンに言う
「分かっているよな?何人かは生け捕りだからな!」
やはりべソンは一言、分かっているとしか言わない。
フォルクスは生け捕りの為に胴体を切り裂くのではなく、足を切り裂く事にした。そうして足を切り落とされた二人以外全て殺してしまっていたべソンに対して溜息をついていた。
足を切断され、痛みからもがいている奴の武装を解除し、足を持ってきてヒールと唱え足をくっつけてやった。
そう、例え切断されても切断された手足があれば、切断箇所に押し付けながらヒールを唱えれば、くっつくのだ。そうして二人の盗賊を捕らえて縛った。
見張りをべソンに頼み、フォルクスは戦利品の回収をしていく。カードの回収と死体から武器や金目の物を漁っていき、とりあえず収納に入れていくのであった。
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