第7話 異変

 収納のお陰で二人の荷物は少なく軽量な事もあり、足取りは軽い。武器は身に着けておく必要があるからそれなりに重いが、鍛えている二人には大した事はなかった。


 また、見た目は脳筋系冒険者ではあるが、兵士だと分かる物は何も身に着けてはいない。もしも兵士と思われるとしたならば髪型くらいだろう。


 今日は晴天で春の陽気といった過ごし易い気温だ。町を出て10分位からフォルクスは歌を歌いながら機嫌良く歩いていた。


 ♫せーんろはつづくーよーどーこまでーもー♪ のーおこえやま・・・♫


 珍しくべソンから話し掛けてきた


「なあ、ご機嫌だな。なんて歌だ?子供が好きそうな歌だな」


「うーん、何だったかな。多分記憶を喪う前の、向こうの世界の歌なんだろうな。自分が何者かの記憶は無いけど、学んだ知識は有るんだよな。ははは」


 べソンは頷くだけで、フォルクスの歌は続くのであった。




 二人はゆっくりとだが着実に首都に向かっていた。


 特に急ぐでもないので街に着くたびに街の中をゆっくりと見回っていた。建物はどういうのか?だったり、特産品が何だった?とかお店で売っている野菜や果物を興味津々にフォルクスは見ていた。基本的に二人の会話はフォルクスが問い掛けて、べソンが短く答える。そういう形だ。


 べソンから何かを聞いてくる場合は大抵切羽詰まっている状況だとか、何かの気配がした時に気配を感じなかったか?等と必要に迫られる場合だ。


 べソンからは中々何かを話し掛けたりはしないのだ。かれこれ1年半位の長い付き合いである。フォルクスは勿論べソンの人となりをよく分かっているし、昔の事に対しては何も言わないし、お互いに詮索はしない。


 おそらく馬の旅の場合の速度程度、馬車程度の速度しか出ていない。馬車と言っても、商隊の場合の荷物を積んでいる馬車の速度だ。荷物で馬の歩みは遅いのだ。


 ごく稀に街道に迷い出てきた魔物と遭遇したが、それ以外は特に何事も無く、4日程過ぎてた。今の速度だと後一週間程で首都に着くかどうかというような場所を進んでいた。


 二人は基本的にはごくごく一般的な宿に泊まっていた。

 高級宿以外は風呂がない。高級宿だと部屋の中にトイレがある所もあるが、それでも風呂は部屋にはないのだ。


 なので一般的に浴場が有る宿であれば高級宿と言われる部類に入ってく来る。


 ただ、フォルクス達は別に風呂に入らなくても困る事はなかった。クリーンを掛ければ体を清潔に保つ事ができるからだ。


 道中4日目に宿泊する町が温泉が出る事で有名なところで、中級宿でも宿に温泉がある温泉宿に宿まって温泉を堪能していた。


 そして5日目は朝早く出発したが、1時間半位進むと異変が有った。悪意ある複数の視線を感じたのであった。



 異変を感じたのは、渓谷の丁度谷の底になる部分を歩いていた時だ。

 そう絶好の襲撃ポイントの一つであり、危険な箇所の為に警戒をしていたので異変に気がついたのだ。


 フォルクスとべソンは溜息をついていた。やばい場所だとは聞いていたが、お客さんが来たよ?という状態だった。ふと上を見上げるとやはり数人の者が見え隠れするのが見て取れ、やっぱり襲ってくるよな。面倒くさいなー!そんなふうに思っていると一斉に矢が降り注いで来た。


 しかしフォルクスの持っている力のおかげで、矢は全て逸れて行く。


 矢が射掛けられるとそれを合図とし、街道の前後から盗賊と思われる粗暴な者達が現れた。フォルクスはべソンに一言言う


「一人か二人は生かしておけよ。後でアジトに案内させるからさ。お宝を頂こうぜ」


 べソンはにやけながら


「そう言う事か」


 とだけ言うが、既に背中合わせになっているので、頷いているのは伝わらないが、フォルクスには何となく頷いたのだと感じていた。


 盗賊の規模として大きいのか小さいのかが分からないが、上を見上げると先程まで矢を射掛けていた者達の姿がない。すぐに来れるのかどうか分からないが、おそらくこちらに来るのだろうと思っていたのだが、こちらに気が付いたようで、動きがあったのであった。

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