第6話 別れ

 密入国を果たした後、ジャニスの親類と言うより、政略結婚して嫁いでいる従兄妹がいるというので、まずはそこを目指す事になった。幼い頃、一緒に育てられていて、まるで実の姉のような存在だというのだ。血が近過ぎるのと、5つ上の為婚姻の対象にならなかったが、実質的な姉であるとの事だった。


 現在地が不明だったので小さい街を回り、ジャニスが場所を把握してくれていた。


 現在地を把握できていた為、何とか目的の街へ向かう事が出来ていた。そして無に事夕方頃目的の街に着いた。領主の妻として嫁いでいると言うので、街の入り口で身分を明かし、嘘だったら全員の身ぐるみを剥ぎ、鞭打ちの刑に処す事を条件に領主の妻に面談を許された。普通嘘ならここまでしないのと、手紙を書き、本人達しか知らない事を書いたから直ぐに会えたのだった。


 ちゃんと本人だと認識された後は、いずれ使節として本国へ帰国する手立てが立った。


 今日は屋敷に滞在する事になり、夜皆で集まり各自の今後の進路について話し合い、そして決まった。


 フォルクスとべソンの2名は首都に行き冒険者として活動しつつ、修行をしフォルクスの失くした記憶を取り戻す旅に出る。


 先の4人組は結局ジャニスと行動を共にし、騎士に成るという。いずれあの国でクーデターを起こし、あのふざけた徴兵システムを潰すと息巻いていた。暫しの別れとなり、二人だけ別行動となるが、友好的に別れる事とし、再会を約束した。


 また、領主権限でフォルクスとべソンは身分証を発行され、行動の自由を得られた。


 一応異世界からの来訪者というのも、8人の秘密になり、フォルクスは兵役に際してのリーダーとして話すに留まり、冒険者に成りたいとの希望で袂を分かつ扱いになった。


 昨夜べソンとフォルクスとで身の上や、今後の事について話し合った。べソンは元々冒険者で、運悪くパーティー全員が徴兵され、おそらく皆既に死んでいるという。元々冒険者としてやっていくつもりだったから一緒に冒険者をするという。


 また魔法を使える者について教えられたのだが、攻撃魔法を使えるのは冒険者100人の中に5人いるかどうかだ。


 文字についてだが、フォルクスはまだ自分の名前位しか書けなかった。辛うじて読めるようにはなっていたが、中々名前以外の字が書けなかったのだ。紙が貴重品で、練習するのは地面に書くしかなかったので、反復練習が出来なかったのが一番の原因だ。兵士としての訓練期間中には教えて貰えなかったのだ。


 また、フォルクスと名乗ったのは頭の中に見えるディスプレイにプロフィールと言う項目があり、そこに有った名前だった。


 表示に有った年齢は今は15歳。中学3年、または高校1年になっている辺りかなと認識していた。学校の知識は何となく有るが、実体験の記憶が無い感じだった。


 本当はフォルクスは今回冒険者登録をするべきだったが、フォルクスは冒険者ギルド、通称はただのギルドの事を殆ど知らない為、登録をする必要が有る事が分からなかった。昨夜皆もそこまで無知だったとは思わず、誰からも教えられていなかったからだ。


 そして翌日には疲労が取れていた為、早速魔術都市である首都を目指し、昼から二人で旅に出る事になったのであった。


 朝早くジャニスが手配したギルドの荷車が来ており、オークを食材として売るのに引き取りに来ていた。


 皆フォルクスがこの世界について疎い事を分かっていた筈なのだが、冒険者について殆ど知らない事を失念していた。更にべソンは既に冒険者カードを持っているのもあり、ギルドとのやり取りはべソンが執り行っていた。路銀を確保するのにオークの魔石の半分近くを売る事にした。


 ギルドの馬車にはフォルクスの仲間のみで馬車小屋からオークを出して荷車に積み込んでいた為、誰も不思議に思わなかった。


 後でべソンがお金を貰いに行く事になり、皆に見送られ買い物をしてから街を出る事になった。


 フォルクスはジャニスと硬い握手をし、再開を誓い別れた。


 ギルドにてお金を受け取ったが、金貨20枚位になった。べソンから聞いたのは二人だと大体一ヶ月は遊んで暮らす事が出来るだろうという額だ。


 ギルドは周辺の店に比べ遥かに立派な作りだった。一階には受付カウンターや、その奥に事務所、ロビー等があり、酒場兼食堂が隣の建物にあるが、無理やり扉を作ってあり、隣一枚越しなので、実質の併設だ。外には冒険者が受ける事の出来る依頼の紙が貼り出されていた。ランク別に依頼があり、魔物の討伐、商隊や貴族の護衛、何かの採取依頼等だ。


 2階より上にはギルドマスターの執務室や、各種講習で使われたり、貸し出しもしている大、小の会議室、応接室、職員の更衣室、資料室等が有る。


 ギルドを出た後は冒険者御用達の店で服やマント、靴等を買い、毛布も必要なので二人分買って行く。ダミーにしかならないが背嚢を買った。勿論本来中に入れる物は収納行きだが。


 次に防具を買い直す。鎖帷子は重いので認識番号を外してから二人共収納に入れていった。あくまで予備の装備代わりにであり、冒険者をするには重いと感じたからだ。そして二人共軽量な革鎧を買い、今まで着ていたのは売った。サイズが小さいが無理に着ていたのだ。やはり良いのはサイズが合わず、安物を買うしかなかった。


 そして武器屋だ。ロングソードを2本売り、べソンに大剣を買う。一度に大量に売ると変に勘ぐられるから、身に着けている物のみ売る感じだ。


 短剣と投擲用のナイフを追加で買い、身に着けていった。


 魔法屋で回復ポーションと毒消し、魔物避けを身に着けられる範囲で買って行く。


 べソンによると、ロングソードでも小さく、元々両手で使う大剣を振るっていた。


 次に食料品店で保存食や弁当を買う。弁当は屋敷で貰っていたが、ストックが欲しかったのだ。



 一通り準備が出来たので、早目の昼を食べ、更にお弁当を包んで貰うのを忘れない。万が一に備えたいのだ。そうして二人で街を出るのであった。

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