第9話 アジト
フォルクスは盗賊二人相手に魔法を使い、木を切り倒す様を見せ付けた。
「分かっていると思うが、逃げ出せば容赦なく切り捨てる。アジトが分からなくても、最悪お前達を殺してカードを出せば賞金が手に入るんだ。さあアジトへ案内しろ」
「分かった。アジトに案内するからどうかどうか助けてくれ、殺さないでくれ」
「分かった。アジトにちゃんと案内をすれば、俺はお前達を殺さないと約束する」
フォルクスは約束した。そう俺達とは言わずに俺と言ったのだ。つまり約束したのはフォルクスだけだ。
近くに盗賊達が乗っていた馬がいたので、その馬でアジトに向かう。
フォルクスは元々馬には乗れなかったが、兵士として訓練をする時に馬に乗れないと不都合が出るという事でフォルクスを始め、馬に乗れない者は馬に乗る訓練をしたものである。貴族の子弟は普通は御者の操る馬車に乗るので、乗馬を趣味としたり、家訓として馬に乗れるようにされていなければ乗れないので、訓練を一緒に受けたのは手の綺麗な者ばかりだった。
戦闘後、馬を走らせる事約10分程で盗賊のアジトがある洞窟に着いた。洞窟の中に住居に適した空間があり、そこを根城にしていると言う。入り口をカモフラージュしておけばそこに盗賊達が住んでいるとは中々気付かないものである。
驚いた事に見張りがいない。あと10人程いると言っていたが、捕まえて人質にしていたり、奴隷等も居なくてそこには盗賊達しかいないと言っていた。
フォルクスは木を切り始め、枝等を集めた。一通り収納に入れ、入り口の前で枝などを出して積み上げていく。その木に対して生活魔法で火を着けていく。生木の為中々火が着かなかったが、燃え始めてからは一気に煙が立ち込めていた。
今度は生活魔法で風を発生させていく。かぜを使い、アジトの中に煙を送り込んで行くのだ。そしてべソンは盗賊達二人を木に縛り上げ、洞窟の入り口の前で待ち構える。
煙に燻され、慌てた盗賊達が次々と出てくるが、フォルクスはどんどんウィンドカッターで足を切り裂いて倒していく。
あっけないものであったが、一番最後に盗賊の頭領と思われる者が出てきた。しかしその者には何故かウィンドカッターがほぼ効かなかった。
驚いた事に持っていた剣でウィンドカッターを受け止めたのだ。フォルクスもべソンもそんな事ができるのかとおどろいたのだ。
ウィンドカッターの刃が見えていれば剣で受け止める事は十分可能なのだが、魔法が使えないような普通の者にはまず見えないのだ。
「あれは見えてさえいれば対処ができなくはないが、見える者には見えるが、盗賊にそんな奴がいるとは驚いたな」
べソンが珍しくボソッという。次いでフォルクスに対して
「驚いたよ。お前さんのウィンドカッターを剣で受け止めやがったんだな。代わるぞ」
そう、べソンにもフォルクスのウインドカッターの刃が見えているのだ。そしてべソンが選手交代だと言い、頭領に斬り掛かって行った。
煙で目がしみているのか、ウィンドカッターの刃を止めた後は精細を欠いており、本来避けるべきだったべソンの大剣の一振りを剣で受け止めようとしたが、剣ごと弾き飛ばされ、入り口近くの岩場に体を打ち付け、更に頭を強打しそのまま絶命して行った。呆気ない最後だったのだ。
またもや生き残った盗賊達を木に縛り、二人で戦利品の回収をする為に洞窟の中の物を回収しようとなったが、煙が立ち込めている為に先ずは洞窟の中の空気を入れ替えなければならなくなった。
入口付近の木を退け、大量の風を中に送り続け、中の空気を入れ替え、綺麗にしていった。そして短剣を構え二人で洞窟の中に入っていく。そんなには広くはなかったが、30人位が生活するのには十分な空間があった。
最終的にお宝置き場にしている倉庫がありそこにお宝が色々あった。主にちょっとした美術品や武器防具の類だ。中にはマジックアイテムと言われる付加価値の高い物があった。どれ位の価値のある物があるのか分からないが、一通り収納に入れて行った。
そこには現金が入った袋がなかった。袋の代わりに木で出来た箱の中に金貨がぎっしりと入っていたからだ。その数はざっと見て1000枚以上だ。それだけあれば何年も遊んで暮らせるだけの金額なのだとべソンが言っていた。フォルクスはラッキー!とか言いつつ、どんどん収納に入れていく。
また、べソンが使うのに丁度良さそうな魔法剣が一本有った。今使っている大剣とほぼ同じ大きさで、何の効果があるのかは今は分からなかったが、今使っているのよりも少し軽く、丈夫な素材で作られているのが見て取れた。魔力を流すとどうやら使用者の力が大幅に増し、軽々と大剣を振れる、そういうような効果が付与されているようだった。
更に魔法反射の効果があるようだった。つまり魔法を防ぐ盾としても使える、そういうような代物だ。べソンは早速今までの剣を収納に入れ、倉庫にあった剣と差し替えた。
商隊などを襲った時に奪ったであろう衣服なども有り、それらも収納にしまっていた。
そして今までに複数の商隊を襲ったようで、いくつもの商隊から奪ったであろう複数の種類の馬車も見付かった。馬車も次々と収納に入れていく。その中にあった荷馬車に馬を繋げ、盗賊の死体を乗せて行った。そして捉えた盗賊達も荷台に押し込め街に向かうのであった。
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