第17話
「ギャハハハハ」と下品な声で笑うのは私のダブルスのペアである守谷奏だ。
「夜更かしして、午前中保健室でずっと寝てたってそれでも受験生かよ。」
「そんなに笑うことかよ。
私さ、一昨年の夢見てた。」
奏は笑うのをやめ、気遣うような視線を向けてくる。
普段はふざけているのに、こういう気は回るんだよな。本当にいい友達を持ったなと思う。
「茉莉は悪くないよ。」
「分かってる。」
結局、一条先輩は噂を流すのを辞めなかったし、陰湿ないじめも続いた。私は三上先輩を避けて生活をした。三上先輩はいつも何か言いたそうに私に話しかけたが、私は何かと理由をつけて逃げた。結局、ちゃんと話をする機会は一度もなかった。
一条先輩が何故告白の事を知っていたのか、三上先輩が一条先輩に愚痴を溢したのではと疑ったこともあったが、きっと考えても答えは出ないことだし、先輩が卒業した今ではイジメは無くなったし、考えても仕方のないことなのだろう。
ただ、今でも変な噂は私に付き纏う。
皆んな何でこんな噂を信じるんだろうと奏に相談すると。
「ん〜、皆んな嫉妬してるんじゃないかな。
茉莉って美人だし先輩にも気に入られてたから。
と言っていたが、私は美人でも無ければ愛想も良くないのでそれは無いなと思う。
私が部活や学校を諦められずにやってこれたのは、見方をしてくれる友達や先輩達がいたからだと思う。
私はいつも助けられてばかりだ。
皆んな友達だから気にするなとか、先輩なんだから当たり前だとか言うけれど、そんな当たり前を当たり前にこなせる人がどれだけ貴重で尊い存在なのか私は学ぶことができた。
これからはこの当たり前の善意を人に返していけるように頑張ろうと思う。
「ねぇ奏、最近悩みとかないの?」
「何だよいきなり、気持ち悪いな。
何企んでるのか知らないけどお前には相談しないよ。」
「そう、死にたかったのね。じゃあ殺してあげる。」
「悩みあります。友達に殺されそうです。助けてください。」
「無理。」
頑張ろうと思う。
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