第11話

放課後、早速委員会の集まりがあったが、軽い顔合わせと受付係の時間の割り振り程度ですぐに終わった。


3年4組の当番は月曜日に決まった。


委員会が終わると史乃と別れて、部活動に向かう。


史乃は卓球部に所属している。

屋内競技だし楽そうだから入部したと本人は言っていたが、実際は走り込みもするし結構ハードみたいだ。


私が所属するソフトテニス部ら楽な部類だ。

他の部員や顧問の先生が集まるまで乱打をして時間を潰し、その後サーブ練習などのメニューをこなしていく。


しかし今日は新入生が部活動見学の為に集まっていた。


「おぉ、今年は去年より人数多いな。」


奏がラケットをカバーから取り出しながら言う。


「そうだね。去年は10人くらいだったっけ。

充分多かったけど。」


ざっと見渡しただけでも20人以上はいそうだ。

まあ、全員が入部希望者というわけではないだろうけど。


「茉莉目当ての子も多いんじゃない?」


「なんでよ、奏目当てなら分かるけど。」


奏が何言ってんだこいつとでも言いたげな顔で睨んでくる。


実際、奏ではモテる。

後輩からきゃーきゃーと黄色い声援を浴びせられているところをよく見る。


「茉莉には分からないだろうね」


奏はやれやれといった様子でコートの向かい側へと歩いていく。


なんだか凄く腹が立つ。


奏はコートの反対側へ到着すると、ボールを山なりに打つ。私は、苛々をぶつける為に強めに返す。

しかし、奏は軽々と返してくる。

そうして、乱打を続けていると1年生達が集まってきて声援を送ってくる。


「きゃー、茉莉様頑張ってー」


私は思わず転びそうになりながらなんとかボールを返す。

しかし、不安定な体制で打ったボールは奏のチャンスボールになる。

奏の放ったスマッシュはラケットに捉われることなく後方のネットに引っ掛かった。


奏はしたり顔でほれみろといった表情でにやにやと笑っている。


茉莉様ってなんなんだ。


奏が何か仕組んだに違いないと結論に辿り着き、一泡吹かせてやろうと気合を入れて打つ。

しかし、奏も食い付いてくる。打ち合いはボレー合戦になり、隙をついてボレーを打つ事でなんとか勝てた。


1年生から歓声が上がる。


「なんだ、茉莉。意外と格好つけたがりなんだな。乱打にそんなに本気になるなんて、気になる子でもいるのか?」


反論しようとするが、墓穴を掘るだけだと気付いて止める。


なるべくギャラリーのいないコートへと移動することにした。


しかし。そのコートには先客がいた。


天宮小春あまみやこはる飯塚小夜いいづかさよの2人だ。


この2人は2年生のペアで、2年生の中では期待のエースだ。


「小夜、混ざってもいい?」と声を変えると。


「勿論です。先輩と打てるなんて嬉しいです。」


小夜は嬉しそうに返してくれる。

できた後輩だ。


「茉莉待ってよ。私も混ぜて。」


奏が追いかけて来る。


「カナちゃん先輩さっきのラリー観てましたよ。

モテなくて残念でしたね。」


「余計なお世話だよ。生意気な後輩め。」


雨宮は先輩にも物怖じしない肝の座った後輩だ。

私は少し苦手意識がある。


しかし、奏とは仲がいいようで、普通の先輩後輩ではヒヤヒヤしてしまうような、辛口なやりとりをしている。


そんな期待のエース2人とラリーを続けていると、顧問の先生がやってくる。

部長の奏が号令をかけ、顧問の先生の元へ部員が集合すると、今日の練習メニューを指示され前衛と後衛に別れての練習となる。


因みに、私や小夜は前衛で、奏や天宮は後衛だ。


解散際かいさんぎわに顧問の先生が奏に、客寄せよくやった。と言っているのを聞いて、やはり何か仕込んでいたなと確信する。


奏め、いつか一泡吹かせてやる。と、決意するのだった。







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