第4話

始業を告げるチャイムの音が、まだ朝の寒気が残る校内に響き渡る。


すっかり読書に夢中になってしまい。気が付かなかったが、もう既にクラスメートは皆席についていた。

しかし、先生がまだ来ていないようだ。


「たまちゃん。なに読んでたの?」


隣の席からの急な呼びかけに驚き、読みかけの本に栞がわりに挟んでいた指を離してしまった。


「えっと、ミステリー?てきな?」

題名が咄嗟に出てこずに表紙を見せるが、ブックカバーがかかっていた為BOOK Earthと書かれた書店名しか伝わらない。


顔にはてなマークを浮かべたままだったの萌香は、クスリと笑って言う。

「ごめん、驚かせた?席に着く前に声かけたんだけど、全然気付いてくれなかったから。そんなに面白い本なんだぁって気になっちゃって。」


「う、うん。面白いよ。話が犯人視点で進んでいくんだけど、犯人は頭の良い人で証拠を残さないんだけど、ある日その犯人の模倣犯が出てきてね、犯人が……」


ガラガラガラー


「遅くなってすいません。

 これからホームルームを始めます。」


担任であろう教師が慌てた様子で教室に入って来た。


私がまだ喋りたそうに萌香を見ていると、萌香は悪戯っぽく笑い「また今度聞かせてね。」と言い、正面を向いてしまった。


1人状況に置いてかれた私は、慌てて本を仕舞い先生の話に耳を傾けたが、萌香に笑われたという恥ずかしさと話しかけて貰えた嬉しさから先生の話は全く頭に残らなかった。


中根萌香の出席番号は24番。つまり、五十音順の席で私の隣の席であることに疑問はない。


こんなことに気が付かなかった馬鹿な自分を恨みたい。

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