第3話

席の順番は名前の順で田所は18番。

私のクラスは36名で横が六列だから、三列目の一番後ろが私の席だ。


席について一息つくと、周りを見渡してみる。

いまだ生徒は半数程度しか揃っていない。


百合ヶ崎中学は小学と中学で学区が変わらないので9年間ほぼ同じ生徒だ。その為、大体の生徒は同じクラスになったことがあるし顔見知りだ。


しかし、だからといって誰とでも話をするかといえば、そういう訳ではない。


ある程度のグループやカーストのようなものがあり、学年が変わるごとに変化していく。そして、萌香と私も今は違うグループだろう。


私が、去年仲良くしていた友達とは、今年も同じクラスであることは名簿で確認したが、まだ登校していないようだ。


教室を見渡していると、どうしても萌香に目がいってしまう。


未だにドアの前で満と話し込んでいる様だ。

満が萌香の耳元で何か話している。萌香は頬を赤く染め何か言い返していた。


なんだろう。

2人が親しげにしているのを見ていると、胸の中で熱いものと冷たいものが混ざり合うような気持ち悪さに襲われる。


私は窓の外へ視線を向け、今朝の萌香との会話を反芻することにした。


『今週末の日曜日、もし空いていれば遊びに行かない?』


萌香は今でも私のことを親友だと思ってくれているのだろうか。

そもそも遊ぶとは何をするのだろう。共通の趣味があるわけでもないのに、萌香に退屈なやつだと思われたら今度こそ私たちの関係は終わってしまうかもしれない。


考え事をすると悪いことばかり考えてしまう悪癖だ。意識を切り替え読書をすることにする。


鞄から文庫本を引っ張りがして栞を挟んでいたページから読み進める。一瞬で物語に没頭して周囲の音が消える。


頭のが嫌な想像でいっぱいになったときは、こうやって現実逃避をしている。


この趣味のおかげで、友達も出来たしそう悪いことではないと思っているが、いつまでも現実逃避するべきではないとも思っている。




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