そして、最強になる

しおレモン

第1話

つまらない。


何をしても充実感がない。


別に何か刺激が欲しい訳でもない、この世なんてのらりくらり生きてほどよく頑張っていれば誉められ周囲に合わせれば生きていける。


こんなことを言うとまだなにも知らないガキのくせしてとか世間を知ってから言えなどと言われるだろう。


正論だ。その意見を否定するつもりも無いし、実際その通りなのだろう。


僕は世間を知らない。


いや本当は知ろうとしていないだけなのだろう。高校生だって将来を見据えてそれに向けて頑張っているやつだっている。僕と同い年なのに働いてるやつだっている。


ただ僕は大勢の波に呑まれ惰性で生きている。本当はそうなのだ。


さっきの大人の意見を自分の都合のいいように解釈して言い訳をして、刺激を求めにいく勇気などなく生きている。今日もほどよく頑張って目の前にある課題をこなし、薄っぺらい友人関係を築いていく。そうなるだろうと思っていた。


帰り道久しぶりに出たライトノベルの新刊を買おうと思い寄り道をしていた。


少し人が多い通りで苦手な道だが今からいく本屋でないと買えないほど人気なシリーズなので致し方なくこの道を通って買いに向かった。


今思えばこれがすべての元凶だったのだろう。


音楽を聞きながら本屋に向かっていると左前に三人組の女子高生が歩いてきた。横に並んで通行人の邪魔になっている。それを気にも留めずおしゃべりに夢中になっていて、心のなかで毒ずく、「何をそんなに喋ることがあるのかねー。まあ関係ないけど」ぶつからないように横を通りすぎ――――


「ドンッ」その瞬間僕は理解した。


「ッ」「キャーッ!?」遅れて聞こえてくる悲鳴。






「ああ、くだらな」








心の中で走馬灯のように流れてくる記憶。心の底からの声だった。「ー、ー」混沌とした意識の中で僕は一つだけ確かな後悔があった。「次こそは自分の意思で…」そこで完全に意識は途絶えた。


何かうるさい声が聞こえてくる。「…ト」「サクト」名前らしき声が聞こえてくる。


そしてうっすらと目を開けるとがたいの良い男と金髪の美しい女がいた。


おそらく日本人ではないであろうことは予測できる。しかしなぜ僕はこの二人に見下ろされるような状況になっているのだろうか?


よくみるとこの女性に抱かれているような体制のような。次の瞬間誰かの泣き声が聞こえてくる。


すごく近いような、そしてこの二人の男女が子供を、いや赤ちゃんをあやすように僕を揺すってきた。


そしてようやく気づく。自分の体を見下ろし、泣いているのは自分だと。






「ああ、そうか。」






これは神が与えた二度目のチャンスなのだ。






「今度は、今度こそは一からやり直せる。」








自分の人生を再度構築できるのだ。そうと決まれば、今後の予定を決めなくては。


とりあえず最低限やらなくてはならないことをざっと頭のかで思い描き順序立てていく。


まずこの世の現在の情勢、何ができるのかそして一番重要なのは後悔しないこと。その事を心に刻む。とりあえず今この状況をどうにかしないとな。

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