第17話 苦戦
リモデ接続して操作したシミュレータと本選で使用した走査顕微鏡兼粒子ビーム照射装置はかなり操作感が違っていて最初はかなり戸惑った。
事前にタウム古細菌のゲノムデータから、硫黄を含んだ2種類のアミノ酸を構成要素とするタンパク質のゲノムを抜き出して重要度、ゲノム改変の容易さを評価した結果で対象を選別し、真正細菌のゲノムを参考に同等の機能を持つ他のゲノムに代替する設計を行っている。計画では2時間の作業時間のうち、8割程度の時間でゲノムの編集が終了するはずだった。
特性が不明のプローブ粒子を操り、DNAからの構成分子の除去、編集材料分子の移動、DNA分子の再構築の一連の作業を行うことは予想以上に時間を要した。最初の30分間の達成率は2割を切っている。
あまり準備しないでTOEICを受験し、READINGパートの最後の方が大量に塗り絵になった時を思い出す。このままでは達成率は最終的に7割を切るのではないか?途中にミスがあれば更に成績は低下する。どうすれば良い?スピード重視で突っ走るか?
「先輩、大丈夫です。私が分子除去の部分を行います。先輩はこちらの操作端末から分子の再構築だけを行ってください!」
由美ちゃんの声に我に帰る。
「シミュレーションでもやっていないのに…いきなり本番でそんなことできないよ」
「私はシミュレーションの時から先輩の横でずっと同じ操作をしていました。大丈夫です」
「もちつきではあるまいし、いきなりではタイミングが合わないのでは?」
「ぶつぶつ言わずに手を動かす‼」いつも由美ちゃんにかけていたハッパを逆にかけられて、腹が決まった。
「よし、1,2,3の掛け声で32行目のゲノムから再開する。」
「1,2,3‼」
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