第10話 続 学生たち

 O大Dチームの初回シミュレーションは散々な結果だった。厚い細胞壁を与えられたターゲットは岩石蒸気が地球の半分を覆う前に死滅した。なんだか彼らの生息域は小惑星の衝突場所に近い領域にしかないようだ。

「多分、もっと広い範囲に生息していないと生き残れないのではないだろうか?

 今度は熱や化学物質に対する耐久性の替りに増殖するスピードを上げてみよう」

「酵素の組成を変えて、代謝速度を上げるのですか?それでうまくいくでしょうか?関係ないですけど今日のオリンピックの種目、何だか知ってます?あれですよ」

「可能性は一つずつ検討していく必要がある。あれは何でもよいから…ぶつぶつ言わずに手を動かす」


 デザインしたゲノム情報に基づいて画面内のSTMを操作してゲノムの編集を行う。

 横で由美ちゃんも端末に向かい何かオペレーションをしている。

「STMの操作は全てこちらの端末から行っているけれど、由美ちゃんは何をしているの?」

「秘密です。でもとても大切なこと」

「そうなの。まっ、いいか?」


 静かなマシンルームに二人のキー操作の音だけが聞こえている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る