第一章2 魔神との契約

「神は自分では死ねないので、私が神を殺して生命を取り込み、神の精霊へとなりました。」


 神殺しをしているのは人間だけではない?精霊も神を殺している。私が裁くべきなのはのは人間だけではないのかもしれない。


「私はあなたを殺すべき?」

「まぁ、わたくしを殺したからってどうにかなる訳ではないですが。やってみます?」


 さっきまでとはオーラがまるで違う。さっきまでは神々しい感じだったのが、今は威圧感がすごく伝わってくる。

 

「あなたがこの世界を狂わせる原因なら、私は殺す」

「別に世界をおかしくしているのは私ではないですよ、それで一つお願いがあるんですが、手合わせをお願いしたいのです。よろしいですか?」

「──いいよ、相手になってあげる。でも、私が勝ったら神を殺した話、詳しく聞かせてくれる?」

「分かりました、それじゃあ、本気でやってもらいますよ。──『空間転移テレポート』」


 私たちは広い荒野へとやってきていた。


「どうやって一瞬でここに」

「魔法です、私は精霊なのでね、魔法を使って戦わせていただきますよ」


 ジェネシスは空間を作り出し、その中に手を入れて一冊の本を取り出した。


「それでは、始めますか」

「本で何を………?」

「私は禁書を扱い、精霊としての魔法で攻撃するのです。つまり、禁書の力を使って魔法の力をより強くして攻撃するということです」


 禁書を使って強化されるのか、少し手強いかもしれない。けど、ここで勝てなければ話を聞くことができなくなってしまう。


「それじゃあ、本気でいくよ」


 私は精霊を召喚し、大鎌を構える。

 精霊の力を使って足の速さを強化し、接近した所で薙ぎ払う。が、


「すごいね、ちゃんと精霊の力を使いこなせてるよ。でも、簡単にはやられないよ」


 私の攻撃は当たる寸前で止められてしまった。


「身体が……動かない」

「君はこの魔法を破らない限り、私を負かせる事はできませんよ」


 ネオ・ジェネシスは笑顔を崩さない、まるで私との戦いを楽しんでいるようだ。

 しかし、この魔法をどうにかしなければ攻撃を当てることすらできない。私はあの魔法を破る打つ手を思案した。


「(精霊をうまく使うしか方法はなさそうだ)」


 身体の自由が戻った私は距離をとった。

 私は精霊の力を使い、地面の土を浮かせて尖形せんけいへと変えていく。それをネオ・ジェネシスに向け、放った。


「………」


 砂埃すなぼこりが大地に舞い、姿が見えなくなる。

 私は一瞬やったと思ったが、砂埃の中から人影が出てくる。


「驚きました、まさか精霊の力をここまで扱えるとはね。でも、まだ足りませんよ」

「ぐぶっ…………」


 今、目前で何が起こったのか分からない。

 数十メートル離れた場所から一瞬で目前へと現れ、鳩尾みずおちをやられたのだ。攻撃された箇所が痛み、そこへ目をやると


「──!?」


 自分の身体に穴が空いているが、もうその穴は塞がりかけていた。

 

「見る限り、無意識に回復の精霊を使っているようですね。では、連続でやったらどうなるんでしょう」


 私の穴が塞がると、身体に穴が空けられる。ずっと、その繰り返しだった。


「こんなにやっても、まだ治り続けるとは……興味深い、そうじゃあ、次は頭を潰したらどうなるんですかね?」


 頭を持たれ、宙吊りになった状態で頭を手の力でぐしゃぐしゃに潰された。

 私はこれで死ぬと思っていた。しかし、頭は再生した、しっかりと意識がある中で治っていくのが分かった。気持ち悪い、吐きそうだ。


「君には驚かされてばかりだよ、まるで死ぬことができないみたいだ」


 それからもずっと頭を潰され続け、頭が再生する度、自分が壊れていくようだった。


「君のことをもっと知りたい、さぁ、もっと力を見せてください」


 もう、限界だ。自分が自分ではなくなっていく、それが怖くて、恐怖のどん底へと突き落とされる。


(貴様はそれで終わりか?閻魔の力を持つ者よ)

「(…………?)」

(我は貴様を助けるため来たのだ)

「(あなたは何者……)」

(我は魔を司り世界に災いを生じされる魔神だ)

「(魔神?)」

 

 なぜ魔の神が……でも、今はそんなことはどうでもいい、そんなことを考える気力など私にはない。


(そうだ、我と契約しろ)

「(それは私を助けるために必要なこと?)」

(あぁ、我と契約し、貴様は今、この状況を覆す力を手に入れるのだ)

「(分かった、契約する)」


 瞬間、自分の身体が何かに侵蝕されていく。


「あぁぁぁぁあああああああ!!」


 自分の中で負の感情が暴走し、自分では力を抑制

することができない。

 私の狂気オーラで周囲に地割れが起き、空は黒色に染まっていく。

 抑制の効かない私は暴走し、無茶な攻撃を繰り返す。

 黒い球体ダークマターを出現させ、大鎌で

両断すると、轟音とともに巨大な爆発が起きる。

 そこから接近して、武器に狂気オーラを纏わせて攻撃する。──が、


 またしても攻撃が止められてしまった。


「ただ、暴れていてはわたくしを倒すことは不可能です。落ち着いてください?さん?」

「──!?」

 

 そう言われた瞬間、私は正気に戻った。自分の負の感情がすぅと消えていき、再び魔神の声が聞こえた。


(正気に戻れたようだな、これで完全に契約は完了だ。我の力で存分に暴れろ)

「(また暴走を起こしたら………)」

(大丈夫だ。暴走は契約の反動だ、それを乗り越えれば暴走せずに我の力を使うことができる)


 暴走は起こらない。なら………

 魔神の力で暴れてやる。


「正気に戻してくれてありがとう」

「どういたしまして」


 私は皮肉っぽく感謝の言葉を述べ、魔神の力を解放する。

 身体が黒い稲光ようなものに覆われ、大鎌はあかく染まる。

 そして私はさらに大鎌へ力を入れる。すると魔法の見えない壁が破れ、刃がネオ・ジェネシスの身体を裂いた。


わたくしの魔法を破り、ダメージを与えた。お見事です、それではこれで最後にします」


 ネオは歪な笑みを浮かべ、とある本をホール状の空間から取り出す。


「では、始めましょうか。──焚書坑儒ふんしょこうじゅ

 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る