第一章 終焉カウトダウンへの始まり

第一章1 神精霊は笑う

元の世界に戻ってきた私はまた、おじいさんの家にいた。家の中は生々しい血で汚れていて、姿が消えかかってる全身から血が流れでているおじいさんの死体、頭のない死体が転がっている。


「──ッ──、埋葬もさせてくれないの……おじいさん……」


 私は頭の無い死体を見て再び怒りがこみ上げてくる。なんでおじいさんなんだと、おじいさんは神様だから殺されて当然なのか、違う、そんなのは当然ではない。殺されて当然なのは、ただ幸せに暮らしている神様を殺す人間の方だ。


「この狂った世界に裁きを下す」


 私はこの狂った世界を終わらせるために周辺の村や町を襲いつつ、それぞれの精霊の能力を確かめていった。しばらくこんな生活が続き、やがて精霊全ての能力を知り、使いこなせるようにまでなった。


「悪いけど、死んで」

「や、やめてくれ…………」


 人々は私を見るなり怯え、絶望し、逃げる。そして私はそんな人たちを斬り裂いていき、肉体を裂く鈍い音を奏でる。


「あれから一週間で200人程度か……」


 ここまでは神の力を持った人間とは出会っていない。どうやら神の力を持っている人間は限られているらしい。でもこれは好都合だ、神の力を持っている人間と闘えば手こずってしまうだろう。なら、出会う前に力のない人間を殺してしまえばいい。


「このまま周辺の町や村を襲っていこう」


 こうして私はただ村や町を襲っていく生活を送っていく。罪があろうがなかろうが人々を殺していった私の全身は血に染まっていった。そして、近くの

町や村の人間を全て殺し終えた私は次の目的地へと足を運んだ。


 ──


「兄さん! 大変だよ! 近くの村や町が襲われたらしいんだ、街の人は通り魔なんじゃないかって言って大騒ぎだよ!」

「そうか、近いうちにこっちにもやって来るかもしれないな」

「そんなぁ……なんとかしてよ兄さん」

「大丈夫だ、今は満を持しているだけだ、いずれ時はくる」


 兄さんは満を持すなんか言ってるけど、本当はただのめんどくさがり屋なんだ。兄さんは昔から後でやると言って、結局何もやらない事が多かった。だから僕は心配なんだ、特に今回に関しては人の命がかかっているかもしれないのに兄さんはやる気になっていない。


「兄さん、今回だけは本当に頼むよ、この街を守れるのはを持った兄さんだけなんだから」

「分かってる、まかせとけ」


 兄さんは力なくそう応えた。僕ははぁ……とため息を吐いた。


 ──


「臭うな、次の所へ行ったら洗うか」


 私は次の目的地へ続く道を歩いていた。


「しかし遠いな、地図を見た感じだと近いと思ったんだけどな」


 ──ここへ少し来る前。


「ここら辺の村とか町は全滅させたし、そろそろ場所を変えないとな」


 次の行く当てを思案すると、ある存在に気づく、『地図』だ地図があればだいたいの行先は決めることができる。私は地図を見つけるため建物の中などを探し回り、やっとの思いで見つけだすことができた。


「これでやっと、次の目的地を決めることができる」


 ──そして今に至る。


「………んっ………、あれは……」


 ここからかなり遠いが、街らしきものが見える。


「まだ先はあるけど、だいぶ近くまでこれた」


 それから街を目指してひたすら歩く、そして景色の変わらない道を抜け、街へとやってきた。


「やっとついた……」


 街に入った後、なんとか身体や服を洗い、久々の食事をしていた。


「この街を襲うのはまだちょっと惜しいかな」


 私はこの街でこれまでの疲れを取ろうと考えていた。この街の人たちは私の大鎌を見ても見向きもしなく、過ごしていくのに快適だ。品も揃っているし、今後の準備もできるだろう。


「このあとはとりあえず泊まる所を探すか」


 私は泊まる所を見つけるため街の中を歩き回り、

ある建物の前で立ち止まる。

 

「歴史図書神聖館──なんだここは」


 館内が気になり中に入ると、一階から二階にかけて大きい本棚が並んでいる。館内は懐古レトロな感じでおじいさんの家を思い出し、なつかしく感じる。


 しばらく館内を見て回っていると二階から男が降りてきた。


「何かお探しですか?」


 男は少し耳が尖っていて、目の細い顔立ちのいい人だった。

 

「いえ、少し見て回っていただけです」

「そうですか、なら少しわたくしとお話しませんか? 実は少し暇していましてね、どうです?」

「まぁ、少しなら」

「では、上へ参りましょうか。ここでは少し目立ってしまうのでね」


 男につれられ、二階へとやってきた私と男はテーブルを挟んで向かい合っていた。


「すみません、あいにく今は用意できる物がないのですが、何か欲しい物があれば買ってきますよ」

「結構です」

「そうですか、では遅れましたが、自己紹介をさせていただきます。私は禁書を扱う者ネオ・ジェネシスと申します、以後お見知りおきを」


 禁書とはいったいなんだ?


「禁書ってなんですか」

「そうですね、その名の通り売ることなどが禁書されてる本ですよ、ここの館にある本も全て禁書です。普通ならこの場所すら見つからないはずなのですが、あなたには何か私と似たような力を持っているのでしょう」


「力ってなんですか」

「神の力……とか、ね。厳密に言うと精霊の力も持ってなくちゃいけないんだけど、別になくてもいけるにはいけるよ、力が一定以上強くなるとね」


 神の力……あの男も持っているということだろうか。


「あなたも神なんですか?」

「そうですけど少し違いますね、私は神になった精霊、神精霊なんです。つまり、精霊の中で一番強い存在ですから、神とはまたちょっと別になりますね」


 精霊の中にもいろいろあるのか。ひょっとしたら、私の精霊も神の精霊とやらになれるんじゃないか?


「他の精霊もあなたみたいになれるの?」

「フフッ……なれますよ、何百年も生き続ければね」


 何百年……無理だ、きっと私の精霊が神の精霊になってる頃には先に私が死んでいるだろう。


「まぁ、他にも大精霊なんかもいますが、大精霊は精霊が主と共にし、ある程度強くならないとなることができませんし、何より精霊を扱える人が少ないので大精霊になる機会が少ないんですよ」


 なるほど、それなら私の精霊たちも大精霊になれるチャンスがある。


「大精霊になる方法、教えてくれない?」

「あなたの精霊たちを大精霊にするつもりなら、やめといたほうがいいですよ、大精霊になった時、あなたが死んでいます」

「私が……死ぬ?」


 なぜ大精霊になったら私が死ぬのだろう。何か代償があるのだろうか、そんなことを考えているとすぐにその答えが返ってくる。


「大精霊になるには、人の生命を取り込まないといけないんです。ですから大精霊になった時、あなたが死んでいます。ですが、普通にしてたら大精霊にはならないので安心してください」

「方法だけ、教えてくれない?」


 ネオ・ジェネシスは不敵な笑みを浮かべる。


んですよ、あなたが死んだあと、精霊はあなたの生命を取り込み、大精霊へとなります」


 ずっともやもやするなと思ってたら、これか、ずっと私は大精霊になったら時、私は死んでいると言う言葉にもやもやしていた。なぜ死んでいるなのか、今分かった、それは大精霊になったら私は死ぬんじゃなく、私が死んだら大精霊になるんだ。


「なるほど、たしかにそれはやめといたほうがいいもしれない。でも一ついいかな、どうしてあなたは生きてるだけで神の精霊になれたの?おかしくないかな?」

「鋭いね、たしかに生きているだけでは神精霊にはなれない、神精霊になるには精霊から大精霊、そして神の生命を取り込まないといけないからね」

「そっか、じゃあ神をどうやって取り込んだ?」


 ネオ・ジェネシスはニヤッと笑った。








 



 



 









 







 





 

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