プロローグ2 与えられたモノ

「誰………」


「俺は裁きを下す大王、閻魔。俺は君とお話がしたくてはるばるやってきたんだ」



 背後には、閻魔と名乗る謎の男が立っていた。



「あなたが、おじいさんを殺したの?」


「いいや、じいさんは自ら死んだ。だが、自ら死なせた原因はあそこに転がってるヤツらだよ」



 閻魔と名乗る男の視線の先を辿ると、そこには首のない三人組の死体が転がっていた。



「そいつらがおじいさんを………」



 私はその三人組の死体へと歩いていき、三人のうち一人の頭を踏み潰す。すると、その頭はグシュッという音を立てて血が飛び散る。しかし私はまだ満足できず、髪を掴み、頭を何度も何度も壁に打ちつけ、自我を取り戻した頃にはもはや原形をとどめていなかった。



「気は済んだか?」



 私は身体を上下させて答える。



「はぁっ………はぁっ…………、気は……済んでない。けど、もう……いい」


「なら、俺とお話しようか」


「さっきも、話がしたくて来たってゆってたけど、話って何」



 男は不敵な笑みを浮かべる。



「この世界を終わらせたくはないか?」



 それを聞いた瞬間、『世界を終わらせたい』、『世界を壊したい』という感情が途方もなく溢れでてきて、鼓動が高鳴る。



「こんな世界いらない。おじいさんのいない世界なんていらない。こんな世界を私は終わらせたい」


「期待通りのいい反応だ。それじゃあ、お嬢さんにこの世界を終わらせるために必要な力をあげるよ。ついてきて──『異世界転移ゲート』」



 部屋の中に黒い渦が現れる。



「これは?」


「まぁ、気にせず入ってくれ」



 私は特に何も考えず、黒い渦の中に入った。


 中に入ると、目前には世界の終点のような光景が広がっていて、前方には玉座があった。そして、その玉座に男が座ると服装が変わり、世界の終点のような場所もガラリと変わる。



「改めて名乗ろう、俺は裁きを下す大王、閻魔だ。お前には俺に代わって、世界に裁きを下してほしい」


「………………」


「まぁ、急にそんなこと言われても困っちゃうよね、じゃあ、とりあえず経緯を話そうか。


──100年前、一人の騎士が神殺しをしたのがきっかけだ、神を殺した騎士は殺した神の力を手に入れた。この時、勇者は気づいた、神を殺し、神の力を手に入れてしまえば、この世界に神の存在など不要なのではないかと。その後騎士は不神教を作り、人々に神は不要な存在だと説いた。最初こそ批判する人も多くいたが、騎士が殺した神の力を使い、人々は彼の説いていることを信じるほかなくなってしまった。それから神話の時代は神殺しの時代へと変わっていった。人類は神々を殺し尽くし、人間離れした力を得て、時代を変えてきた。しかし、神を殺され、激昂した天使たちが人類を襲ったが、神々の力を手にした人類に返り討ちにされ、神と同様に天使も大量に殺されてしまった。そして、神も天使もいなくなったことで悪魔たちが活発化し、人間に取り憑き、神の力を手にした人間同士が争うようになった。


──ここまではいいかい?」


「とりあえず、そんな世界終わらせるべきってことは」



 私は閻魔の話を聞いていて呆れてしまう。なんて愚かなんだろう、理不尽に神や天使を殺し、挙句の果てに悪魔に取り憑かれて人間同士と争う。そんな世界にあんな優しいおじいさんがいたのは奇跡だったんだと改めて思う。



「俺と同じ考えで嬉しいよ。それじゃあ、続きを説明するぞ──人間同士の争いは100年前からずっと今もこの先も続いてゆく、何故なら、もうほとんどの人類は悪魔に取り憑かれてしまったからだ。悪魔に取り憑かれた人間は生き残った天使や神を探して殺し、さらに力を手に入れようとしている。お前と一緒に暮らしていたじいさんも数少ない神の一人天空の神だったんだよ、だから悪魔に取り憑かれた人間に狙われたんだ。あのじいさんはとても偉いよ、人間に君を殺されず、自分の力を奪われないように最善を尽くした。結果的にじいさんは死んじまったがな。それでなんだが、こんな狂っちまった世界に俺は裁きを下したいと思っているんだが、俺直々に裁きを下すことは出来なくてな、君に裁きを下してほしいんだ」



「私が裁きを下す?」


「そうだ、君が俺に代わって世界を終わらせてくれ、君は俺の力を与えるのに適任なんだ」



 適任……どういうことだろう。力を与えられる人が限られているとかだろうか。



「具体的には、どうやって世界を終わらせるの?それに私が適任って……」


「世界は人類が完全に終わるとそれに伴って、世界も同時に終わってゆく。それから、適任というのは君が唯一の取り憑かれていない純粋な人間だからだよ、もちろん他にも取り憑かれていないヤツはいるんだが、みんな亜人で、君しか取り憑かれてない人間は居なかったんだよ」



 なるほど、取り憑かれていない人間しか力を与えることができないのか。私が取り憑かれなかったのはきっと、神様だったというおじいさんのおかげだろう。本当に感謝してもしきれない存在だ。



「それで、私にどんな力をくれるの?」


「俺が君にあげる力は、『裁きを下す力ジャッチメント』だよ」


「それはどういう力なの?」


「そのまんまだ、罪に対して罰を与える力、もっと詳しくいうなら罪を犯した者への攻撃が強力になる力だ。神殺しが大勢いる世界ではかなり強力な力になるだろ」



 確かにそれなら私でも充分に戦うことができるかもしれない。



「それじゃあその『裁きを下す力ジャッジメント』を使って世界を終わらせればいいんだね」


「頼んだと言いたいところだが、『裁きを下す力ジャッジメント』だけでは神の力をもつ人間に劣ってしまう。そこで君に武器と精霊をあげようと思う、この中から武器を選んでくれ」



 私の目前に5つの武器が並ぶ、右から大剣、太刀、斧、大鎌、双剣の順だ。その中で私は大鎌を選んだ。



「この大鎌の武器にする」


「『死神の大鎌デスサイズ』か、殺傷能力が高くて、名前的にも君に合いそうないい武器を選んだね」



 名前的にも合っている。そうかもしれないと私は思う。なぜなら私はこれから人を殺めていくのだから。



「で、精霊というのは?」



 閻魔は一瞬、意表を突かれたような表情になり、精霊の説明を始めた。



「精霊は契約した者に力を与える存在だ。精霊は契約した者が死なない限り契約は解除されることはないから安心してくれ」


「なるほど、それで私にどんな精霊をくれるの?」


「全ての精霊だ。能力はそれぞれあとで確認してくれ」



 閻魔の周りに数多の精霊たちが姿を現す。



 全ての精霊と契約をするのにかなり時間がかかったが、無事全ての精霊と契約できた私は『死神の大鎌デスサイズ』を持って、私は元の世界へと戻った。




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