第2話
「あ、、」
僕にもたれた反動で、彼女のスケッチブックが開いて床に落ちた。
僕はそれを拾って、反射的にパラパラとめくってしまった。
それはとても綺麗で、プロが描いたイラストのようだった。
「あの、すいません」
僕が夢中で見入っていると彼女が僕に声をかけた。
「あ、ああ。かってに見て失礼しました」
僕はほこりをはたいてスケッチブックを彼女に返した。
「絵が、とても上手なんですね」
彼女は顔を真っ赤にして手を振った。
「そんなこと。私他に取り柄ないんです」
「絵を描いている時間だけは自由になれるんです」
彼女はかみしめるように言った。
「あ、そうなんですか」
僕はなんと言って良いか分からなかった。
「そんなことより、その制服、あたま良いんですね」
「それしか取り柄がないので」
僕の制服をみて彼女がため息をついた。
それは、全国でもトップクラスに東大合格者が名を連ねている高校の制服だったからだ。
「あの、君の絵をもっと見てみたいんだけどライン交換できる? 」
「え、いいですよ」
彼女が携帯をだすと、僕とラインを交換した。
僕が勉強のこと以外に興味を持つのは、おじさんに鉱石を初めてもらったときぶりのような気がする。
彼女はふふふと笑って、ラインを送った。
「よろしく」
名前の欄にはカレンと表示されていた。
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