勉強ができない絵描きの女の子と勉強しかできない僕

茜カナコ

第1話

「プルルルルル」

「東京行き発車します」

「あ、乗ります」

女の子が乗り込んできた。

僕は奥に体を押し込むと、そのすきまに女の子が立った。


女の子はスケッチブックを抱えていた。

僕は学生鞄を抱えて、立ち尽くしていた。

「ありがとうございます」

女の子は顔が見えないけれど僕にお礼を言った。


「別に」

僕はそれ以上何も言わなかった。

女の子の制服は僕の近所で有名なFランクの女子校だった。

頭の悪い奴にはあまり関わりたくない。

僕は鞄から文庫本を取り出して読み始めた。


「きゃあ」

列車が揺れた。

女の子が僕にもたれかかる。

あったかくて良い匂いがした。

「大丈夫? 」

「はい。すみません 」

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