第10話 募る思いと違和感と
「……おはよう」
少しテンション低く教室に入ったサクラ。騒がしい教室の中、少しうつ向いて歩くサクラに気づいたサヤカもマホが気づいて声をかけた
「おはようサクラ」
「おはようございます」
二人の明るい声に、慌てて笑って返事をすると、サクラの前の席に目を向けた
「ああ、ミツバはまだ来てないよ。よく遅刻するんだよね」
「……そっか」
サヤカの言葉にボソッと呟くように返事をすると席に座り二人の会話に混ざり話を楽しんでいると、バタバタと足音をたててミツバが教室に入ってきた
「おはよう!」
大声で挨拶をするミツバ。クラスの人達がミツバの方に向いて挨拶をする。挨拶を返しながら、席へ向かうと側の席にいたサヤカとマホもミツバに声をかけた
「おはようミツバ。今日もギリギリだね」
「うん、なんだか夜、眠れなくて……」
苦笑いしながらサヤカに返事をしていると、席の後ろにいたサクラに気づくと少し後退りをして苦笑いで声をかけた
「……おはよう」
「おはようございます」
ミツバの挨拶にサクラがニコッと笑って挨拶を返すと、ちょうどチャイムが鳴り、教室がまたバタバタと騒がしくなっていく。休憩時間にも特に会話もせず過ごしていく
「サクラさん、ちょっといい?」
お昼時間のチャイムが鳴ったと同時にミツバがサクラに声をかけた。声に気づいてサクラが隣にいたミツバの顔を見た瞬間にサクラの手をつかみ、無理矢理引っ張ってバタバタと早足で教室を歩きだしたミツバ。二人の行動に、一緒にご飯を食べようとして声をかけようとしていたサヤカとマホが驚き戸惑っている
「二人ともどこいくの?」
「ゴメン、一緒にお昼ご飯買ってくる!」
サヤカに大声で返事をすると、サクラの手を引いたまま教室を出ていった。二人の後ろ姿を呆然と見ているサヤカとマホ。ふぅ。とため息ついて二人でお昼ご飯を食べはじめた
「傷……治ったんだね」
教室から少し離れた学校の廊下で話しはじめたミツバ。強く握られていた腕を離されると赤くなった腕にそっと触れるサクラを睨んでいる
「あっ、うん。すぐに治せるから」
「本を使ったの?」
「……うん」
「私の本を使ったの?どうやって?」
強い口調で聞いてくるミツバに、サクラはまだ赤い腕をつかんだまま顔を背けた
「ミツバちゃんの本じゃないけど……それに使い方も言えないよ……」
質問に言葉を濁して答えるサクラ。すると、ミツバが近づいて、更に声を荒らげた
「返して私の本。勝手に持っていって何をしているの?」
「返せないし、何も言えないよ……」
「持っていった私の本。あれは……!」
と、話している途中で言葉につまったミツバ。少しサクラから離れて本の事を思い出しはじめた
「……あれ?何であの本を持ってたんだっけ……」
「思い出さないで!」
今度はサクラがミツバの話を遮るように叫んだ。すると、廊下を歩いていた生徒達が叫び声が聞こえたのか、少しずつ二人の側に集まってきた。まだ本の事を思い出しているミツバを残して、歩きはじめたサクラ。ミツバの隣を歩いて通りすぎる時、か細い声でポツリと呟いた
「本は絶対に返さないから……ミツバちゃんも、もう本のことは忘れてね……」
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