第11話 今度は私が守る番
「はぁ……結局今日も何も分からずか……」
一人トボトボと歩くミツバ。ため息混じりに足取り重く家に帰っていく
「早退していたし。やっぱり、昨日の傷が治ってなかったのかも……」
サクラの事を思い出してはまたため息ついて、サクラが持っていった本の事も思い出す
「でも、あの本って確か夢の中で……」
「夢ってどんな夢?」
ミツバの独り言に答える声。驚き声のする方を探して周りをキョロキョロと見渡すと、ミツバの前にこちらを見て微笑んでいるナツメがいた
「楽しい夢?それとも……」
「あなた……昨日の……」
クスクスと笑いながらミツバに近づくナツメ。同じく少しずつ後退りでミツバもナツメから離れていく。縮まらない二人の距離。すると、緊張感からか少し顔を強張らしているミツバにナツメがまた話しかけた
「ミツバ。少しお話しない?」
「話って……。それに、私の名前なんで」
「だって、少し前までミツバとよく遊んでいたもの」
「私と?」
ナツメの言葉を聞いて足を止めたミツバ。ナツメも足を止めて、またクスッと笑う
「サクラのことも忘れるなんて。いつも一緒に本を書いていたのにね」
「サクラさんと……」
「思い出さなくていい。ミツバちゃんは本を知らない世界を生きて」
ナツメの言葉に、驚きうろたえるミツバ。すると突然、どこからか聞こえてきた声のする方に顔を向けるミツバとナツメ。ふわりと空からサクラが舞い降りてくると、ミツバの前に立ち二冊の本を持ってナツメを睨んだ
「サクラ……。でも、サクラが来てからミツバは巻き込まれているんだよ。少しぐらい話したっていいじゃん」
「私が来たのは、ミツバちゃんを守るためだもの。何も言わない」
話しながら睨むサクラの態度に不満げなナツメ。サクラの持つ本を見て、はぁ。とため息ついた
「ミツバに守られたくせに、今度はミツバを守るって言うの?」
「ナツメちゃん!」
ナツメの言葉をミツバに聞こえないように大声で阻むサクラ。だが、大声もむなしく話し声が聞こえていたミツバは、
サクラの後ろで驚いた顔をしていた
「……私が守った?サクラさんを?」
振り返りミツバを見たサクラ。ミツバと目が合い、慌てて目を背けた。二人の様子を見ていたナツメ。不穏な雰囲気に、二人に背を向け歩きだした
「まあいいや。ミツバ、また今度遊ぼう。もちろん本も一緒に、ねっ」
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