第4話 もう、悲しい思いはさせないように
「どうしようかなぁ……」
学校が休日のお昼過ぎ、大分寝過ごし一人で街中を歩くミツバ。一段と騒がしく人通りも多い中をキョロキョロと周りを見渡しながら歩いていく
「サクラさんに会えると思って、出てきたけど……連絡先も知らないしなぁ……」
と呟きながら、特に宛もなく歩き続けていると、行きつけのお店に着くと休日のため、混雑しているお店の中。少し並んで新商品のアイスを買い、また街の中を歩いていく。少しアイスが溶けてきた頃、少し街から外れた公園に着いてベンチに座って、携帯に来ていたサヤカとマホからの連絡を返しながら、アイスを頬張っていく
「そっか。みんなも出掛けてるんだ……」
はぁ。とため息ついて、公園の遊具で遊ぶ子供たちの姿を見ながらアイスを食べ終えると、ふと顔を上げて空を見た
「サクラさんって、夢の中以外でも、どこかで会ったことある気がするんだけどなぁ。でも、どこで……」
サクラのことを思い出して空に向かって呟くミツバ。すると、強い風が吹き荒れて、近くにあった木々たちがガサガサと音をたて大きく揺れた
「……あれ?」
しばらくすると強い風が収まり、ふと前を見ると、楽しそうにはしゃいでいた子供達や公園を歩いていた大人たちの姿が居なくなり、静かな公園にミツバ一人だけがいた
「あんなに人がいたのに……」
ベンチから立ち上がり、辺りを見渡すミツバ。すると、遠くからミツバの方に歩いてくる人影を見つけた。その近づいてくる人を見つつも、他にも人がいないかと少し目をそらす。だが、人がいそうな雰囲気も話し声も聞こえず、怖くなって少しずつ後退りしながら、さっきよりも大分近くなってきた人影を凝視する
「この本には、私が知らなかった事を書き留めたいの……」
と、呟く人影の声が聞こえたミツバ。少しずつ後ろに歩いていた足を止め、息を飲んだ
「でも、もう書くことに飽きてきたから、どうしようかなって……」
と言うと、ニコッと笑う人影。声と髪の長い可愛らしい容姿を見て、同じくらいの年齢の女の子と気づいて、少しホッと安堵した
「ねえ……。ミツバ、どう思う?」
「えっ?どうして私の名前……」
初めて会うその女の子に名前を言われて、戸惑うミツバ。まだ近づいてくる女の子から、少しずつ離れて逃げようとした時、二人の間に突然影が現れた。大きくなっていく影の上に、空からサクラがふわりと降りてきた
「サクラ……やっぱり来たの」
突然現れたサクラの姿に驚く様子もなく微笑む女の子。一方、ミツバはサクラの後ろ姿に驚き呆然としている
「ミツバちゃん!逃げて!」
「えっ?……でも」
「早く!ここは私がどうにかするから!」
と、少し振り向きミツバに叫ぶサクラの姿に、一度頷いて
走り出したミツバ。サクラの後ろから見える走っていくミツバの後ろ姿を見て、女の子が、はぁ。とため息ついた
「ちょっとサクラ。ミツバを逃がしたらダメじゃない」
女の子に声をかけられサクラの表情がキッと睨むような目で女の子を見た
「ミツバちゃんにはもう、本は使わせないって決めたの。だから、ツバキちゃんも……」
「そう簡単に、この本から逃げられると思う?それに、サクラだって……」
サクラの返事に呆れつつ側に近づいてくるツバキ。サクラの手に現れた二冊の本を見て、ツバキもまた本を取り出し、サクラと睨みあう
「逃げられない……。だからこそ、ミツバちゃんには、二度と使わせない。悲しいことは全て私が受け止めるんだから!」
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