グッダグダ
そんな風に、すごく<いい子>な
なにしろ、高校に上がったばかりの頃には、安心しすぎたからか腑抜けちゃって、成績がグッダグダだったんだ。だけどまあ、学校には真面目に通ってたし、『進学すら危うい』ってほどじゃなかったから、私は敢えて何も言わなかった。
そもそも高校の時点で、彼女は、志望校も自分で決めて手続きのほとんどを自分でしてたしさ。
私はただ、彼女を見守ってればいいだけだったんだけど、やっぱり人間として未熟な部分、足りない部分は彼女にもあって、思いっきり油断しちゃってたってわけ。
結果、本来の彼女の成績なら<貸与型>じゃなくて<給付型>の奨学金さえ受けられる可能性のあったところを、一年二年の成績が基準を満たしてなくて、結局、貸与型の奨学金しか受けられなかったんだ。
これについて
「あ~! やっちまった~!」
ってすごく悔やんでたよ。
そう。彼女は決して、<完璧>じゃない。それどころか、むしろ、だらしなくて駄目なところも多いんだ。
なにしろ、家に帰るなり、ほとんど裸みたいな格好でリビングで寛いでるくらいだからね。
だけどこれは、私も同じ。女二人で、色気の欠片もないひっどい格好で寛いでるんだよ。
でもさ、それがいいんだ。
「あ~、やっぱ、家が一番だよね~」
ってさ。
「つくづく、男に媚び売るような生き方は私には無理だって感じるわ~。男に媚びてだらしない格好も見せられないなんて、ストレス半端ないでしょ。ねえ?」
彼女の言葉に、私も、
「いやもう、まったくその通り。私がパパと結婚できたのだって、パパがそういうの気にしない人だったからだもんね。じゃなきゃ、パパに選んでもらえてなかったよ」
心底からの本音として口にできてしまう。
ダンナの前の奥さんは、そういう部分でも、いつでもビシッと決めてて、
<鋼鉄のキャリアウーマン>
って感じだったらしい。
ただ、反面、<母親>としては決して褒められた女性ではなかったと。
「私、小さい頃、シッターさんを自分の母親だと思っててさ。『ママ』って呼んでたのをうっすら覚えてる。で、本当のお母さんのことは、<親戚の叔母さん>だと思ってた。
でも、考えてみたらおかしいよね? シッターさんは朝の十時に家に『帰って』きて、夕方六時に『家を出て行く』し、週に二日、別のシッターさんが来るわけでさ。それを、『夜のお仕事でもしてるのかな?』って考えてたのも覚えてるよ」
だって。
実はこの辺り、彼女自身の記憶も曖昧なんだよね。なにしろ、保育園に通ってた当時に両親が離婚して、その時、
「ママはね、わたしをすててしごとをとったんだ」
って口にしたんだからさ。少なくともこの時点では、実の母親のことを<自分の母親>と認識はしてたはずなんだ。
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