第6話闇夜
期待……していないと言ったら嘘になるだろう。
でも、頭の何処かで期待なの度するな、と言う声がする。
湯上がりの彼女の髪が、香りが艶かしく初めての行為に対する好奇心と男としての高揚感が夜を支配し始める。
どうやって、始めればい?
どれが正解だろう?
彼女に全てを任せたいような、男としてそんな事はしたくないという妙な矜持にも似た使命感が余計な緊張を呼んでしまった。
たたなかったら、役にたたなかったらどうしよう。
緊張でそんな、余計な事まで考えてしまう。
葉子さんにベット迄促されたが、先程まで意識しないように努めていたのに、ベットの存在感が今更ながらに急上昇していく。
敢えて灯りを落として薄暗い証明も、これから事をより良く連想させた。
俺は、彼女が日頃使っているであろうベットに座らされた。
座っている俺と、立っている彼女。
そんな彼女が身を屈めて俺の首に両腕を絡めてきた。初心者な俺にもそれがこれから彼女が何をしようとしているかくらい解る。
そっと目を閉じると彼女は腕に力を入れ俺の体に自身のを寄せ付けて顔を近付け……キスをした。
それが………合図だった。
初めは軽く、そして彼女の舌が俺の口を割って侵入してくると俺も彼女の舌を自らの舌で絡めた。次第に深くなるキスに夢中になると彼女は俺の膝上に跨がった。
密着度が増していく。
たまに漏れ出るお互いの吐息は媚薬。
媚薬に溺れている俺は、彼女が着ている服がもどかしくて、もっと素肌を味わいたくて、彼女の衣服を脱がした。
素直に脱がされてくれる彼女の行為が、俺の行動を認め許してくれている様で、俺の意識も加速する。
彼女の胸に手が触れても拒まれない。
初めは恐る恐る触れていたのに、次第に遠慮は何処かに行ってしまった様だ。
試しに両手で触れたら、彼女の今まで聞いた事のない声が聞こえた。
手にフィットする胸、想像していたよりも柔らかくて力を入れたら壊れるんじゃないかって思った程だった。
先端に口付けて、舌を使って吸い上げると何とも言えない安心感すら覚える。
彼女は必死に自分の胸に吸い付いてくる俺の頭を抱え込む様に優しく撫でてくれた。
満足した俺は次第に下へ下へと意識が向いていった。
彼女の弾力があるのに柔らかい太ももの内側に唇を這わせ、今度は上へ上へと上っていく。俺がその場所にそっと触れるとヌルッとした感触があった。
彼女も感じてくれているんだと思ったらもう止められずに、今度は舌を這わした。
俺が、『いい?……』と聞くと『いいよ…』と答えてくれる。
手が震えてゴムがなかなか上手く付けられない俺の手の上から彼女の手が重なり優しく手助けしてくれる。
俺は男としての目的地に、すんなりと侵入を果たした自分自身が感じるリアルな感触で一瞬飛びそうになるのを必死に堪えた。
こんなにも我慢が辛くて嬉しい行為を俺は知らない。
初めはゆっくりと、でも我慢なんて出来ずに加速する腰の動きに答えてくれる葉子さんに、俺は純粋に彼女が好きだと思った。
……俺は、満たされるとはこういう事を言うのかと初めて解った。
「……ヤバい。……どうしよう、嬉しい」
キスの合間に出てきた俺の本音に、笑顔で『私もよ…』と答えてくれる。
薄暗くても表情は分かるもんだな、等と妙に冷めている部分も残しながら、俺の初めての夜は過ぎて行った。
◇◇◇
朝目覚めると既に彼女は起きており、ついさっき迄は腕の中にいた感触に名残惜しいと思いながらも必死に彼女の存在を探した。
1DKだから見付からない筈ないのに……上半身だけ起こした俺に気付いたんだろう。
彼女はベランダから、俺に声をかけてきた。
「おはよう、起きたのね……」
「おはよう……………ございます」
どうして気の利いた事を俺は言えないんだ!!
何て心の中で愚痴っても、状況が改善される訳じゃない。
葉子さんはベランダから室内に入りゆっくりと俺に近付いて来ると、額にそっとキスをした。
「……起きたときに一緒に居られるって良いね……」
俺は………そうだね、と答えながらも彼女の言葉の影にある存在に気付いてしまった。
ねえ、誰の何の行為と比べているの?
それを聞いてしまえば、何故か彼女はいなくなってしまう様で………怖くて聞けない。
彼女は大人だ。
俺の知らない誰かと過ごした夜もあっただろう。……昨日の彼女を、俺とは違う誰かも知っていると思うと嫉妬で相手を殴りたくなってくる。
そんな資格は、俺にはないのに。
それに、過去にまで嫉妬する面倒くさい奴だと思われたくもなかった。だから子供は嫌なのだと、彼女に思われたら……軽く死ねる。
そんな俺の葛藤等知らない彼女は、嬉しそうに、『朝ごはん、食べるでしょう?』って聞いてきたんだ。
◇◇◇
大学の授業が終わった俺は誰かに正解を教えてほしくて、夕飯奢るから!!という半場返答なん聞いている様で聞いていない文句で、斎藤を拉致するとコンビニで夕飯を買って俺のアパートに向かった。
「……お前の夕飯を奢るから、はコンビニ弁当か?……」
斎藤は怨めしそうな顔をしたが、それでも来てくれる、そんな奴だ。
「……今度はちゃんと奢るから、今日は出来れば人のいないところが良いんだよ……」
「……人気のない場所って……お前……俺はお前を友達以上には見れねーぞ?」
ああ、斎藤はこんな奴だ。
「奇遇だな、俺だって俺より背の高い彼女は御免だ」
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