第7話
「こちらの方は打ち所が悪くて下半身が動かなくなってしまった方ですわ。この方の治療をお願いしますわね」
「あ、はい」
そんな訳で取り敢えず診察をしよう。
「メディカルチェック」
『メディカルチェック。オールスキャン開始━━━スキャン終了。神経伝達回路に以上の無し。但し軽度の精神疲労と筋肉疲労有り』
「うえ?あの…この人普通に歩けるポイですけど」
「驚いた。貴女、触診もしないでそんな事まで分かりますの?」
「ゑ!ああ、まあ私の特技みたいなもので…ヤハハ」
「ふーん。まあいいわ、合格よ。では早速紹介するわね。貴女の目の前の方がこの教会の治療師のマトル先生よ」
「よろしくね。マトルといいます。ごめんね?試す様な事して。前にド素人雇っちゃて問題起こされちゃった事があってね」
「はぁ、なるほど…で試験な訳ですね」
「うん、正解」
「では、マトル様。私はもう戻ります。後はよろしくお願いいたしますわ」
「ああ、ありがとうガーネットさん」
「いえ、失礼いたしますわ」
ガーネットさんと言うらしいシスターさんが去っていかれた。
私はその姿を見送りつつマルト様と呼ばれていた治療師を改めて見る。
「えーと、新人ちゃんは長期の仕事希望なのかな?」
「え?あ、いえ短期です」
「そうなんだ。因みどれくらいの怪我や病気なら見れるのかな?」
「まあ、だいたいのものなら問題ないかと」
「そうなんだ。なら早速で悪いけど一緒に出かけよう」
「ここでやらないんですか?」
「うん。午前中はかかりつけの患者を訪問診察するんだ」
「なるほど。わかりました」
「よろしくね。あ、そこの薬箱よろしくね」
「え?薬?いるんですか?」
「は?何いってるの?薬持たずに何しに行くの」
そういってマルト様は医療鞄を持って歩き始めたので私も慌てて薬箱を持ってついて行く。
「おはようございます。お加減はいかがですか?」
1件目のお宅は以外と近くのようだ。歩いていくらしい。
「……えーと。まだ歩くんですか?」
「え?ああ、はい。もう少し先ですね」
「えーと、馬車とか使わないのですか?」
「ははは、我々には馬車や馬を管理する余裕はないですからね」
「え?でも教会が管理してるのですよね?」
「いや、教会には我々が間借りしているだけだからね。いわゆる教会とは相互援助の関係ってやつかな」
「へえ、そうなんですか。てっきり医療関係は教会組織に組み込まれているのかと思ってました」
「まあ、ほとんどの場合はそうなんだけどね。ほら着いたよ」
「へ?」
そこは随分と大きな御屋敷だった。
「ここは?」
「ここはアガルタ総合治療院さ」
「総合治療院?」
「そう!怪我や病気の種類別に部署を作ってあって、その専門の治療師を置いているんだ」
「それってまさか総合病院?」
「びょういん?何ですかそれ?」
「あ、いえ。独り言ですので気にしないで下さい」
「はぁ。そうですか。では参りましょうか」
「あ、はい(びっくりした。この世界でも専門医療の概念はあるのね。他の町には無かったから驚いたわ)」
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