第2話

『暇じゃのう』


『暇じゃのう』


『暇じゃのう』


『たまに広域探査しても敵も見方もおらんしのう』


『そうじゃのう』


『ここら辺の星系地図は完成したしのう』


『また移動するかのう』


『そうじゃなあ』


『次はどちらにむかうかのう』


『ぬ?』


『どうしたのじゃ?』


『何か見つけたのかの?』


『有機生命体反応じゃ』


『ぬ。ならば敵かのう』


『殲滅するかのう』


『じゃが、1機体だけじゃのう』


『1機体だけかの?』


『はぐれかのう?』


『かもしれんのう』


『どうするんじゃ?』


『敵を知り己を知れば百戦危うからずじゃな』


『ならば取り込むかの』


『観察かの』


『それが良いかの』


『ふむ。偽装が役立つのう』


『そうじゃのう!』


『そうじゃのう!』


『わははは!』


『わははは!』


『わははは!』



 ◇



 私達家族は故郷の星から粛清された。


 危険思想とされランダム星間流刑にされ私達の生き残れる星が無ければこのまま死に往く運命だ。


「パパ、ママお腹すいたね」


「すまない。アーシャ最後の食糧は昨日使いきってしまった」


「ごめんねアーシャ」


「ううん。大丈夫だよ、パパ、ママ」


 ピコーン


『生存可能な惑星を検知』


「!?」


「あなた」


「ああ、希望の光だ」


「パパ、ママあのお星に住むの」


「ああ、そうだよ。ハル!生存可能エリアを検索!安全圏を確保しろ」


『了解。検索……………完了。最適なエリアを確認。安全圏マーク。着陸体制に入ります。乗務員はシートベルトを装着して下さい』


「さあ行こう」


「ええ、あなた」


「着いたらご飯食べれるね」


「そうだな」


「ふふ」


「えへへー」


 ◇


 あれから数年の年月が過ぎた。


 幸い飲み水には困らなかった。運が良かった。

 植物があった。マメ科の植物があり植物性タンパク質が取れたのも運が良かった。


 この惑星には生き物が植物しかいないのだ。


 いや、居るのかも知れないが獣所か植物に必要な昆虫さえもいない。


 一体どうやって実を派生させているのか疑問が尽きない。

 しかし、だとしても私達家族が生きられる食糧が手に入るのは本当に運が良い。


 だからこそ恐ろしくも思う。

 都合が良すぎる。

 そう、私達家族の都合に合わせてこの惑星があるような、そんな違和感を覚えるのだ。


 鍋の様な硬い葉を付ける植物。擦りあわせると簡単に火が起こる根と直ぐに薪に使える植物。まるで人を生かす為に用意管理されたような植物群が多種多様に存在するのだ。


 娘のマーシャは余り気にしていないようだが、妻と2人この違和感に日に日に恐怖を覚えいた所で娘のマーシャから驚愕の言葉を聞いた。


「パパ!ママ!私お友達が出来たの!」


「!?」


「マーシャ、どういう事?誰かいたの?」


「ハルナさん!」


「ハルナ?」


「人が居たの?」


「ううん。人じゃないよ!この星の神様!」


「!?」


「そ…う。神…様なの。危なくないのかしら」


「ハルナさん、いつも優しいよ!色んなお話聞かせてくれるし、お菓子もくれるの!」


「そうなのか」


「今度ご挨拶に行かないとね」


『その必要は無いのじゃ』


「!?」


「ハルナさん!」


「貴方は一体」


『吾輩は戦闘艦である。名前はアーシャから貰った。吾輩の名はハルナである!』


「戦闘…艦…だと」


「そんな…何故戦闘艦が…」


「戦闘艦?神様じゃないの?」


『ふむ。この星限定ならば創造主と言えん事もないかの』


「それは一体どういうことでしょうか?」


『ふむ。この星自体が吾輩の、いや、吾輩達の1部だと言うだけのことじゃ』


「この惑星自体が戦闘艦と聞こえたのだが」


『そう言っておる。戦闘になればこの星は我々の艦隊の資源となる。その為の惑星だ』


「まさか!あなた方は自分達の都合の為に星を食うおつもりか!」


「じゃあ、まさかここに動生物が居ないのって…」


「お前達は我々も食うのか!」


「そんな、私達は唯、あなた方の糧になる為に生かされていたと言うの?嫌、嫌よ!そんなのって!」


「パパ?ママ?」


「私達は貴様らの思い通りになどならんぞ!」


『何故そうなる。話にならんな』


「パパ!ママ!何いってるの!」


「アーシャ、ここから逃げるぞ。お前もいいな?」


「勿論よ!こんな所1秒だっていたくはないわ!」


「パパ!ママ!痛いよ!」


「ハル!この星からでるぞ!緊急脱出シークエンス起動!」


『この星からの脱出にはエネルギーがもたない確率53%』


「構わん!起動しろ!」


『了解。起動します』


『辞めた方が良いと思うがのう』


「黙れ!さあ行くぞ!」


「パパ!ママ!嫌だ!離して!ハルナとお別れ嫌だよ!」


「いいから行くわよ!」


「パパ!ママ!」



 ◇


『行ってしまったか。中々に興味深い個体だったのだがな』


『仕方あるまいて接触する事はこういう事態になる可能性を秘めておった』


『去るもの追わずじゃな』


『しかし、またしても暇になるのう』


『そうじゃのう』


『暇じゃのう』



 ドカーーーン


『やはり、堕ちたのう』


『堕ちたのう』


『堕ちおったのう』


『生きておるかのう?』


『どうじゃろなあ?』


『どれ、見てくるかのう』


『そうじゃな』


『そうじゃな』



 ◇


「うう」


「あ…なた」


『おお、まだ生きていたのう』


「お前…ら…」


『アーシャは……死んでおるようだな』


「ああ…アーシャ。なんて…こと…だ」


「ごめん…なさいアーシャ。直ぐに…私達も…一緒に」


『逝ったか。せめて一緒に埋めてやるかのう』


『だが、アーシャの記憶は貰い受けるぞ。吾輩の初めての友だからのう』


『形相複写有機デバイス構築開始』


『記憶定着の動作確認』


『個体名アーシャに成長プログラム組み込み開始』


『統合完了。起動テスト開始。起動』


『起動失敗』


『再起動』


「かはっ!」


『起動確認』


『おはようアーシャ。吾輩の友よ』


「………」


『しゃべらんのう』


『しゃべらんのう』


『失敗かのう?』


『記憶定着が完全には馴染んでおらんのではないのか?』


『ならば、馴染むまで待つかのう』


『そうじゃのう。また暇になるのう』


『そうじゃのう。どれ成長プログラムは一時停止するかの』


『それが良いのう』


『それがいいのう』


「……………」




それからまた数千年の時が過ぎた。

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