独断と偏見によるベストブック ２０２０

実録小説 神戸芸能者 山口組・田岡一雄三代目と戦後芸能界 山平重樹

　実録というだけあって、エンターテイメント性に欠けるかと思いきや、そんなことはない。むしろありふれた作り話よりよっぽど面白い。

　主人公というか作品に主だって登場するのは、田岡一雄を筆頭にした暴力団組織山口組と真っ当な堅気の神戸芸能社という社会的にグレーな二双。

　舞台は昭和三〇年代の関西。日本が高度経済成長期の頃だけあって、田岡の志は神戸芸能社を日本一の芸能事務所にすること。

　日本一芸能社への道のりは、荒く、厳しく、時に華々しく。

　彼らはヤクザなのかそれとも芸能事務所員なのか、本人たちは色分けできていても、世間の目は悪い方へ偏る。

　一つの芸能事務所の盛衰を、様々なストーリーとともに物語テイストで描いている。ぜひとも一読を。