#843

――ミウムとメイカがブレイクたちのところへ現れたとき。


フォクシーレディと彼女が能力で出現させたドローン軍団のところには、メイカの恋人であり、フォクシーレディと同じくハザードクラス――還元法リダクション メゾットのラヴヘイトが来ていた。


「なんだよこりゃ……?」


ラヴヘイトはメイカに頼まれ、アンとシンの手助けに向かったのだが、そこで見た光景に圧倒されていた。


その光景とは、シンがたった一人で何百体もいるドローンを相手に孤軍奮闘こぐんふんとうしていた姿だった。


「共和国が俺程度の化け物を造っていたのが懐かしいな。ありゃ本物の化け物だ」


かわいた笑みを浮かべた彼は、一人戦うシンのもとへ飛び込んでいった。


「くッ!? なんなのよあいつッ! 教祖の息子にあんな力があるなんて聞いてないわよッ!?」


フォクシーレディは、ドローンを打ち倒していくシンの姿にを見て、大きく声を張り上げていた。


彼女が偵察用ドローンから得た情報は、まずシンが永遠なる破滅エターナル ルーインの教祖イード・レイヴェンスクロフトの息子二人のうちの兄であるということ――。


神具である聖剣ズルフィカールから加護かごを与えられた奇跡人スーパーナチュラルであるということ――。


マシーナリーウイルスの適合者の少年――ミックス・ストリングにやぶれたというものだった。


そして、ズルフィカールを失った今のシンには全盛期のような力はないと思っていたのだが。


現在、てのひらからオーラを放ちながら戦う彼は、まるで話に聞いていたイード・レイヴェンスクロフトのようではないかと、驚きを隠せずにいる。


そんなフォクシーレディの胴体へ蹴りを放ってアンが口を開く。


「お前の相手は私だ。周りを気にする余裕があるなら、少しは反撃してきたらどうだ?」


フォクシーレディは右腕で受け止めたが、蹴りの衝撃でゆがんでいた表情がさらに歪む。


そして、激しく後退させられる。


「ぐッ!?」


「お前、私とやり合いたかったと言っていたわりには大したことないな。ハザードクラス、死の商人デスマーチャントとはいっても所詮は商人ということか」


アンの言う通り――。


フォクシーレディはアンに手も足も出ないでいた。


それでもまだアンは、マシーナリーウイルスの適合者としての能力を使ってもいない。


彼女は持ち前の格闘技術と、電磁波放出装置――銃剣タイプのインストガンのみでフォクシーレディを追い詰めている。


「いい気になるなッ!」


「なってなどいない」


フォクシーレディが声を張り上げると、アンは無表情でポツリと言葉を返した。

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