#844

――アンがフォクシーレディを圧倒しているその側では、シンと駆けつけたラヴヘイトが数百体はいるドローン軍団と戦っていた。


エレクトロハーモニー社の戦闘用ドローンである全高三.五メートル、重量二.二トンの無骨な金属装甲にブルーのカラーリングがほどこされた人型兵器ナノクローン――。


そして、全高四.四メートル、全幅一.二メートル、重量約二十二トンの車輪のような兵器宿命の戦車チャリオット オン デスティニーが、二人を取りかこんでいる状態だ。


無数のナノクローンが腕を動かし、装備されたビーム兵器――スモールコーラスを一斉に放つ。


その雨のように降り注ぐ閃光を、シンは両手のてのひらかざして光の壁――オーラふせぐ。


取り囲まれているため、彼の背後からも当然ビームが飛んで来るが、ラヴヘイトは胸を張ってそれを受けていた。


「お返しだッ! 喰らえッ!」


ラヴヘイトの身体にビームが当たると、その部分の空間がゆがみ、そして輝き始めてブラスターを発射し、ナノクローンを打ち倒す。


これはラヴヘイトの能力であり、彼の二つ名でもある還元法リダクション メゾットによるものだ。


還元法リダクション メゾットとは――。


あらゆる種類の運動エネルギーを吸収し、 自らの望む形に変換して放出する能力。


打撃や斬撃など受けてもビクともしない。


爆発、核エネルギーを吸収できる


吸収したエネルギーは、身体能力、腕力、耐久力、治癒力などの増強、エネルギーブラストとして利用できる。


だが弱点もあり、自動的に発動できるものではないため、意識が途切れたり不意打ちには弱い。


そして、ラヴヘイト自身が相手の攻撃の原理を理解していないと使用ができないなどがある。


ナノクローンの放つビームの原理ならば、今は無きバイオニクス共和国の大学でトップの成績だったラヴヘイトにとって、うの昔から解明済みである。


「これが還元法リダクション メゾットか……。本当に人間かお前か?」


「あん? お前のほうがよっぽど人間離れしてんだろうが。まあ、俺の彼女も魔法使いみたいなもんだけどな」


「お前の彼女というのは、もしかしてマスター・メイカ・オパールのことか?」


「シンっていったっけお前? まさかメイカのこと狙ってんのか?」


「俺が以前に狙っていたのは奇跡人スーパーナチュラル呪いの儘リメイン カースだった。当然マスター・メイカ・オパールもその中に入っていたな」


「やっぱ狙ったのかよッ!? クソッメイカは渡さねぇぞッ! 右ほおタトゥーッ!」


「ちゃんと話を聞け。昔の話だ」


「なら今のメイカには魅力かねぇってのかお前ッ! ふざけたこと言ってっとぶっ殺すぞコラッ!」


「じゃあ、なんと言えばいいんだ……」


最初こそ軽口を叩きあって――もとい声を掛け合っていたシンとラヴヘイトだったが。


倒しても倒しても現れるドローンの前に、次第に疲れを見せ始めていた。

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